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【書評】木皿泉「さざなみのよる」-死者のコトバが伝わり、残り、生き続ける。その幸せ!

 これは今年のベストかもしれない。NHKで2016、2017年のお正月に放送されたドラマ「富士ファミリー」の後日談、じゃなくて前日談的な物語。ドラマでは、本のキーパーソンであるナスミはすでにユウレイだが、小説ではその冒頭で彼女の死が描かれる。43歳。がんだった。ナスミ役、ドラマでは小泉今日子。これはもうしっかりと頭に焼き付いているのでどーしようもない!小説でもナスミはコイズミ。そのイメージで読んだ。


 「富士ファミリー」というのは近所の中学生からニセコンビニと呼ばれているナスミの実家。彼女は20代半ばでここを出て東京に行ったが、結局、結婚した夫と共に戻って来て地元で死んだ。


 「さざなみのよる」は、彼女が残したコトバや行動がまるでさざなみのように、いろいろな人の心の中に広がっていく物語だ。全体は14のエピソードに分かれているが、最初はナスミの姉や妹、夫や祖母との生前の話が描かれる。しかし、その対象は肉親だけにはとどまらない。家出未遂の男友達だったり、小さな頃に彼女を誘拐しようとした男だったり、愛読マンガの作者だったり、「ナスミさんになりたい」と願って本当にナスミになっちゃった?女性だったり。さらにさらに、彼女とは面識のない小さな女の子だったり。

 

  ナスミという女性、少し個性的ではあったけれど、本当にフツーの人間だった。フツーだけど彼女は自分の人生を懸命に生きて死んだ。一生懸命生きたからこそ、彼女のコトバは、近い人にも遠い人に伝わり、残り、それぞれの心の中で生き続ける。それは、死者にとっても生者にとってもすごく幸せなことではないだろうか?もちろん、これを読む僕らにとっても。

 

 えっ?ナスミがどんなことを言ったか?う〜ん、それは全部ヒミツ。いろんな人がいろんな違う場面で共感し救われるのではないかな。木皿泉、やっぱりスゴし!

 

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