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【書評】宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」-3つの苦い物語。その苦さの中にこそ「人間」がいる!

 杉村三郎シリーズの第5弾。「誰か」「名もなき毒」「ペテロの葬列」までは大会社のムコ殿という立場で素人探偵だった彼が、前作の「希望荘」から私立探偵になり、事務所を開く。今回の「昨日がなければ明日もない」が私立探偵になってからの2冊目。いろいろと縛りのあった前3作もおもしろかったが、彼がより自由に動けるようになった近作2つが個人的には好きだ。

 

 杉村という人間がよくある鋭さのある探偵ではないのも何だかいい。といっても愚鈍ではなく、愛される人間。どこかで人間をしっかり見ていて、あぁこういうことかと真相に辿りつく。彼には大事件ではなく市井の事件がよく似合う。

 

  さて、今回収録されたのは3つの物語。その中心には女性たちがいる。自殺未遂を起こしそのまま母との連絡を絶った娘、夫を通してその原因はあなたにある、と告げられ困惑する母(「絶対零度」)。杉村が付き添いで出席した披露宴、そこで待ち受けていたのは花嫁たちの反乱?(「華燭」)、子どもが殺されかかっていると杉村の事務所に押しかけてきたかなり性悪なシングルマザー。周囲の人々に話を聞いてみると…(「昨日がなければ明日もない)。

 

 それぞれの「事件」は最初の読者の「感触」とは違う方向へ、違う方向へと進んでいき、最終的には思ってもみなかった着陸点に舞い降りる。そのストーリーの無理のないこと!展開の見事さ!キャラクターの際立ち方!宮部みゆきの物語には付け入る隙さえない。どれもがある意味、苦い物語である。その苦さにこそ、人間がいて、人はその苦さを忘れることができない。

 

◯このブログで紹介した杉村三郎シリーズは以下の2冊です


2019.1.9  少しだけエンジンがかかってきたかなぁ。読書は「一切なりゆき〜樹木希林のことば〜」 

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