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【映像化/映画評】映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」-僕らはこんなサリンジャー伝を観たかった

 ツイッターや当ブログで発信していた内容が目に留まったたらしく、試写会に招待された。こういうこともあるのだな。ちょっと得した気分。というわけで、映画の感想。
 
 謎に包まれた人生、といえば、思い出すのがチェスのボビー・フィッシャーとこの映画の主人公 J・D・サリンジャーだ。ボビー・フィッシャーは近年、フィクションや映画にもなったが、サリンジャーの人生が映画化されたのはこれが初めてではないか。彼は奇人変人的な扱いを受けているような気もするし、確かにそういう一面もあったのかもしれない。

 

 しかし、この映画に登場する若き日のサリンジャー(ジェリーと呼ばれている)は、女性にも気軽に声をかけるちょっとナンパな青年だ。大学の文芸コースでも教授に逆らったりもするが、それなりに野心があり、書くことにも意欲的に見える。この教授、実は文芸誌「ストーリー」の編集長ウィット・バーネットで、己の「声」を物語にすることを生徒たちに説いている。彼との出会いはジェリーにとって生涯大きな意味を持つことになる。

 

  文芸誌でも作品が評価されるようになったジェリーだが、人生の大きな転換点がやって来る。太平洋戦争への召集だ。間近での仲間の死、強制収容所の惨状…。彼はドイツで神経病棟に入れられ、帰国後もPTSDに悩まされる。それでも書くことを止めないジェリーだか、苦悩はさらに深まっていく。

 

 ダニー・ストロングは初監督とは思えない演出でサリンジャーの人生を描いていく。サーーッと直線を引いたような無駄のない演出がいい。「ライ麦畑」が大ヒットし、人気作家になっても彼は様々なことに絡め取られている。隠遁生活を始めても、けっして自由にはなれない。書くことでしか救われない一つの魂!

 

 僕らはこんなサリンジャー伝を観たかったのだ。主役のニコラス・ホルトが多感な青年ジェリーを見事に演じている。教授役のケヴィン・スペイシーが印象的。パンフレットによるとこの映画の原作になったのはケネス・スラウェンスキーによる「サリンジャー 生涯91年の真実」。これちょっと読んでみたいな。

 

◯映画は1月18日公開です!

 

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