7つの物語からなる連作長編。最初の話から終わりまでの間に6〜7年の歳月が流れる。舞台は富士山が見える樹海のそばの地方都市。なんでも揃うショッピングモールと弛緩したようなフードコートのある町。主人公の1人日奈はそこで介護士をしている。同じ介護士の海斗と暮らしていた彼女は、自分の気持ちに気づき別れを切り出す。そこに現れるのが東京の編集プロダクションの男、宮澤だ。強く心惹かれる日奈。
中心となるこの3人の男女、けっして愛される人間ではない。男たちは「やわらかく、ふるふるしたものが詰まっている」弱っちい人間だし、日奈も自分の都合だけで男とついたり離れたりしているように思える。日奈と宮沢は富士の見える場所を離れ、新しい町で暮らすようになるのだがそこもまた同じような地方都市、彼らの生活も歳月の中で倦んでゆく。