また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2019.5/4週)

 出る本。先日、展覧会の話を書いたショーン・タン。そこでも紹介した図録を兼ねた本「ショーン・タンの世界」(5/20)が発売になります。アマゾンの内容紹介から抜粋しますが、うううううむ、これ欲しいなぁ。

 

本書は、2019年5月にちひろ美術館で開催される日本初の展覧会『ショーン・タンの世界 どこでもないどこかへ』展の図録兼書籍として刊行。
作品を1点1点鑑賞できるようにし、画家ショーン・タンとしての側面から改めて絵本の世界を紐解く構成になっています。
名作『アライバル』はもちろんのこと、初期の絵本から最新作の絵本、立体作品まで網羅。
さらに、絵本から離れ画家として描いた油彩画も初公開。
絵本の構想を練ったコンセプトノート、溢れるイマジネーションを描き留めたスケッチ、モレスキンのスケッチブックなど、作家の真髄に触れる貴重な資料も紹介します。
知られざる制作の裏側を語るショーン・タンのインタビュー、以前からショーン・タンの世界に注目している金原瑞人氏の寄稿も掲載。
また油彩画の魅力をイギリスのギャラリストが解説。ショーン・タンのすべてが詰まった一冊です。

 
◯ちひろ美術館・東京の「ショーン・タンの世界展」についてはこちらから

 

 

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【エッセイ/書評】ヨシタケシンスケ「思わず考えちゃう」-思わず考えちゃう人は幸福?それとも、不幸?

 絵本ではないヨシタケシンスケさんの本。やっぱり絵本の方が好きなのだけど、この本にはヨシタケさんらしさが横溢していてなかなか楽しい。え〜っ、それって!と思ったり、おぉ、そうだよな!って納得したり。時には激しく涙、は出なかった。

 

 本の元になったのは彼がスケジュール帳に描き(!)とめていた「思わず考えちゃったことイラスト」&そこに書き添えた言葉だ。例えば、トイレのイラストに「一番きたなくない部分ってどこだろう」という言葉が添えてある。その「絵と文」について、ヨシタケさんが編集者などに説明したことを文字化したのがこの本だ。

 

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【文学賞】第32回三島由紀夫賞、山本周五郎賞が決定しました!!三国美千子さんと朝倉かすみさんが受賞です

 三島由紀夫賞は三国美千子さんの「いかれころ」に決まりました。パチパチパチ!まだ書影は上がっていませんが、6月27日発売予定です。「いかれころ」は新潮新人賞の受賞作品ですね。新潮社のページに三国さんの受賞の言葉とインタビューが掲載されています。

 

 

 「いかれころ 」という言葉は河内弁で「踏んだり蹴ったり」や「頭が上がらない」という意味だそうです。河内を舞台にしたこの物語、なかなかおもしろそう!

 

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【書評】辻村深月「傲慢と善良」-婚活はこんなに苦しいのか?主人公・真実の苦悩と痛みが強く心を打つ

 冒頭、主人公の坂庭真実が架(かける)という男に「あいつが家にいるみたい」と電話をして助けを求める。彼女はその後、行方不明になりストーカーにあっていたらしいことが判明する。えっ?こういう話?と最初は驚いたが、この物語は真実の失踪を端緒とした「婚活」がテーマの物語だ。実は彼ら、婚活で出会ったカップルで結婚を間近に控えていた。いったい2人に何があったのか?

 

 警察ではなぜか事件性が薄いと判断されたため、架は真実の行方を捜すために、彼女の両親や婚活相手の男たちなど関係者と会い、ストーカーのことを突き止めようとする。そこで次々と明らかになってくるのが真実の過去であり、彼女を含めた婚活中の男女の様々な思いだ。

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (20195/3週)

 出る本。映画化も決まった山田風太郎賞受賞作品、塩田武士の「罪の声」(5/15)が文庫になります。あのグリコ・森永事件を題材にした記者小説の傑作!これは未読の人にはぜひぜひ読んで欲しいなぁ。まずは僕の書評を。

 

◯映画化の話題はこちら。脚本がなんと「逃げ恥」の野木亜紀子!


 「リンドバーグ:空飛ぶネズミの大冒険」「アームストロング:宙飛ぶネズミの大冒険」がすごくおもしろかったトーベン・クールマン。ネズミの冒険3部作の完結編「エジソン:ネズミの海底大冒険」(5/16)が出ます。おぉ、これは楽しみ。ストーリーはもちろんだけどクールマンは細部までこだわった絵が素晴らしいので期待度大です!

 

◯前の2作の感想もぜひ読んでみてください!

 

 

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【絵本】ちひろ美術館・東京で「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」5月11日から開催!

 最新作「セミ」が本日発売になったばかりの絵本作家ショーン・タン。このブログでも彼の絵本をたくさん紹介して来ましたが、なんと練馬下石神井にある「ちひろ美術館・東京」で彼の展覧会が開催されることになりました。おぉぉぉぉ!題して「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」。東京のちひろ美術館はいわさきちひろさんの自宅兼アトリエ跡に建てられたもので、僕は何度か行っていますがとても気持ちのいい空間で大好きです。

 

 それにしても、ショーン・タンの展覧会やるなんて、ちひろ美術館やるなぁ。彼の絵本が世界中から注目を集めるきっかけになった「アライバル」は、本当に衝撃的でした。移民をテーマにした文章のないグラフィック・ノベル!これは現在23の言語で出版されているそうです。それに続く「遠い町からきた話」、「ロスト・シング」(これが実はデビュー作)、「鳥の王さま」「エリック」「夏のルール」もすごくいいです。

 

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【書評】朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」-生き難い時代をもがきながら生きていく魂を描いた傑作小説

 今年のマイベストに間違いなく入ってくるであろう傑作小説。一応、中央公論新社の文芸誌「小説BOC」の「対立」をテーマにした「螺旋プロジェクト」の中の1冊ではあるけれど、はっきり言ってそれはどうでもいい。これだけで独立しているし、朝井リョウの新たな一歩となるであろう力強い物語になっている。

 

 主人公は智也と雄介の2人。第1章で智也は植物状態でベットに横たわり、雄介は親友として毎日彼の元を訪れている。2人に何があったのか?2章以降は回想になるが、2人の関係が直接描かれるわけではない。転校生として2人の通う小学校にやってきた一洋、中学で同じクラスの亜矢奈、大学で出会った与志樹。それぞれの物語がしっかりと描かれる中で、登場人物的に2人が出てくる。競争的なものを排除する時代を生きてきた若者たちの「今」をリアルにそして細やかに描くことで、2人が生きてきた時代も見えてくるのだ。朝井リョウはデビュー作の「桐島、部活やめるってよ」「何者」「何様」など、群像劇の中でそのテーマを浮かびあがらせるのが上手い。

 

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