物語は2部に分かれている。1部は2008年夏、2部は2016~19年夏の話だ。実は1部は川上さんの芥川賞受賞作「乳と卵」をリライトしたもの。未読なのでどう変わったのかは定かではないが、主人公夏子の貧乏話から始まって、姉巻子の豊胸手術の話、突然話さなくなった巻子の娘緑子の話などなどなど、大阪弁が飛び交うこの1部はすこぶるおもしろい。そこには作家になりたくて10年前に大阪から東京に出て来た30歳の夏子がいる。そして、この1部は確実に2部へと繋がっている。だからこそのリライトなのだろう。
そして2部。8年が経ち、夏子は短編集を出し、それがヒットはしたものの次の作品がなかなか書けず、エッセイなどでなんとか食いつないでいる。そして、40近くになった彼女は、思っている。
続きを読む「これでええんか 人生は」
「でもわたしはこのままいくんか ひとりでよ」
「わたしは会わんでええんか後悔せんのか
誰ともちがうわたしの子どもに」