また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【文学賞】第36回織田作之助賞は窪美澄さんの「トリニティ」に!おぉ、よかった、よかった

窪美澄「トリニティ」

 

 今年の織田作之助賞に窪美澄さんの「トリニティ」が決定しました。おぉ、これは嬉しいぞ!今年上半期の直木賞候補でしたが、残念ながら受賞を逃し、かなり気に入っていた僕はガッカリだったのですが、ここで受賞できてよかった、よかった。パチパチパチ!窪さんの小説はずっと読んでいてファンなので本当にうれしいです。織田作之助賞については大阪文学振興会のホームページから引用してみますね。

 

織田作之助賞は、大阪生まれの作家で、小説のみならず評論活動でも活躍し、日本文学に一時期を画した織田作之助の生誕70年を記念して1983年に創設しました。2014年に装いを新たにし、織田作之助賞(既刊の単行本)と織田作之助青春賞・織田作之助U-18賞(公募)の三本立てになりました。両賞とも、各種団体にご支援いただき、織田作之助賞実行委員会が運営しています。

 

 織田作之助、名前は知っているし、大阪の作家という認識はあるのだけど、代表作の「夫婦善哉」も読んでないなぁ。ううむ。

 

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【書評】村田沙耶香「生命式」-クレイジー沙耶香、またまた全開!?12の作品を収録した最新短編集!

村田沙耶香「生命式」

 

 いやいやいやいや、これまたクレイジー沙耶香全開の短編集。表題作の「生命式」が最初に入ってるのだけど、これがなんとも強烈で度肝を抜かれる。帯に「文学史上、最も危険な短編集」とあるけれど、まぁそれほどではないがなんだかヤバい。

 

 その「生命式」。退職した会社の先輩中尾さんの死を知った主人公のOL池谷さん。一つ上の先輩が「中尾さん、美味しいかなぁ」なんて言い出すものだから、あぁ早くも!とビビってしまう。生命式というのは「死んだ人間を食べながら、男女が受精相手を探し、相手を見つけたら二人で式から退場してどこかで受精を行う」というものだ。人口が激減して人類滅亡の不安感が世界を支配したあたりから、「増える」ということが正義になって、命が命を生む「生命式」のスタイルが浸透していったらしい。

 

 ただ池谷さんはこの状況に疑問を抱いている。30年前と価値観がまったく違ってきたことに納得がいかないのだ。詳細に描かれる中尾さんの生命式、さらに同じ会社で気があった山本の死と生命式。それらを通して池谷さんの生命式に対する気持ちにも変化が表れる。山本の式の後で出会ったある男が「正常は発狂の一種でしょう?この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだ」というフレーズが忘れがたい。

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊! ヨシタケシンスケ 、宮部みゆきの新刊、出た雑誌2冊にも注目!(2019.12/1週)

 まずは訂正。先週の「出る本、出た本」で紹介した宮部みゆき「ほのぼのお徒歩日記」ですが、書いた時点では分かってなかったのですが「著者初のエッセイ集『平成お徒歩日記』に、書き下ろし一編を加えた新装完全版」だそうです。なぁ〜んだ、楽しみにしてたのに。先週分にも訂正入れましたが調査不足ですみませんでした。

 

 さて、出た雑誌。文藝別冊「川上未映子 ことばのたましいを追い求めて」出ました。特別書き下ろし、単行本未収録作品、ロングインタビュー、対談などなどかなり充実した内容。これはじっくり読みたいなぁ。買おう。

 

文藝別冊「川上未映子

 

 もう1冊、出た雑誌。「芸術新潮」の12月号、特集は「2020年美術展ベスト25」、これはチェックしておかないとね。特別付録として全国の美術館情報を収録した「芸新手帳2020」も付きます。

 

 「芸術新潮」2019年12月号

 

 さて、出る本。ヨシタケシンスケ 「なんだろうなんだろう」(12/5)出ます。まずは内容をアマゾンの紹介から。

 

○「なんだろう」を徹底追究!12のテーマ
がっこう/ たのしい/ うそ/ 友だち/ しあわせ/ 自分
正義/ ゆるす/ 自立/ 立場/ ふつう/ 夢
○ 道徳教科書(小1~中3/光村図書)のコラムが、かき下ろしを加えて一冊に!
○ ヨシタケシンスケの発想と言葉が光る!

 

 おぉ、道徳の教科書にコラムとして載ってるのか。びっくり!いずれにしてもこのテーマをヨシタケさんがどう料理したのか、楽しみ!

 

ヨシタケシンスケ 「なんだろうなんだろう」

 

  さてさてさて、宮部みゆき「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続」(12/7)出ます。 三島屋変調百物語シリーズの6作目。これはもうずっと読み続けている傑作シリーズ。物の怪たちも多く登場するけれど、その真ん中にいるのはいつも人間。人というものの弱さ、寂しさ、悲しさを描いて見事です。前作で第一期が終わって今作から二期目。さてさてどんな展開になるのか。早く読みたい!!

 

宮部みゆき「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続

 

◯前作の僕の書評はこちら。ここから1巻からの書評のリンクにいけます

 

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【BOOK NEWS】村田沙耶香「コンビニ人間」、NHK FMでラジオドラマに!!11月30日放送

 村田沙耶香「コンビニ人間」

 

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 わっ、ビックリした!村田沙耶香の芥川賞受賞作「コンビニ人間」がNHK FMでラジオドラマになります。今週の土曜日11月30日の午後10時から10時50分まで。全1回です。出演は栗山千明、鈴木浩介他。主人公の古倉恵子が栗山さんですね。あの物語がどんな感じのラジオドラマになるか。ちょっと楽しみ!脚色は「新日曜名作座」などで数多くのラジオドラマ脚本を手がけている入山さと子さんです。詳しくはこちらで。

 


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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊! 村田沙耶香、宮部みゆきの新刊、2つの対談集にも注目!(2019.11/5週)

村田沙耶香「半変身」

 

 さて、出る本。村田沙耶香「半変身(かわりみ)」(11/27)出ます。昨日読み終わった短編集「生命式」もなんだかすごかったのですが、これは劇作家の松井周との共同プロジェクトから生まれた物語。松井作・演出の舞台版「半変身」も今月末から来月にかけて上演されるようです。内容はアマゾンから引用

 

その島はすべてを狂わせる――。
演劇界の鬼才・松井周と練り上げた千久世島ワールドを舞台に、人間が変わり世界が変わりゆく悪夢的現実を圧倒的イマジネーションで紡ぐ待望の書き下ろし中編!
「早稲田文学増刊 女性号」掲載の、既存の「性」の役割を根幹から揺さぶり話題となった中編「満潮」を併録。

 

ううむ、気になる。詳しくはこちらを。

 

 宮部みゆき「ほのぼのお徒歩日記」(11/28)は新潮文庫から出ます。これは「LINEノベル」に書いていたもの。活字化されるのは初めてです。宮部さんってエッセイをほとんど書かなくて「平成お徒歩日記」というのが唯一ではないかな?東京に残る江戸を散歩しながら再発見していく内容でなかなかおもしろかった。その続編的な感じならとても楽しみ。あ、タイトルの「お徒歩」は「おかち」と読みます。

*これなんですが書いた時点では分かってなかったのですが「平成お徒歩日記」に書き下ろし一編を加えた新装完全版でした。前作買ってる人はお気をつけて!!

 

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宮部みゆき「ほのぼのお徒歩日記」 

 

 ◯「平成お徒歩日記」はこちら!

宮部みゆき「平成お徒歩日記」

 

  

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【映像化】辻村深月のミステリー小説「朝が来る」が河瀬直美監督の手で映画に!2020年初夏公開

辻村深月「朝が来る」

 

 情報は前に出ていたのですが、主要キャストがやっと解禁になったので紹介します。原作の辻村深月「朝が来る」、読みたいと思いながらまだ読んでない。ううむ。「殯の森」「あん」「光」などで国際的な評価も高く、東京五輪の公式映画の監督でもある河瀬さんが選んだ原作なのでまたまた読みたい気分に。すでに文庫にもなっていますが、文庫では河瀬監督自身が解説を書いています。どんなストーリーかはアマゾンから。

 

長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。それぞれの葛藤、人生を丹念に描いた、胸に迫る長編。
第147回直木賞、第15回本屋大賞の受賞作家が到達した新境地。

 

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【写真集/感想】竹田津実「生態写真集 キタリス 」-リスたちの恋、巣作り、エサ集め、子育て等を多数の写真で紹介!

竹田津実「生態写真集 キタリス 」

 

 リスはかわいい。吉祥寺の井の頭自然文化園にもリスがいて触ることもできるのだけど、本当にかわいい。で、この写真集、注目は「生態写真集」と銘打っているところだ。表紙を見るだけで分かるでしょうが、この写真集のリスももちろんかわいい。飛んだり、跳ねたり、走ったり、木に登ったり。ならばなぜ「生態写真集」?

 

 竹田津実さんは、元々は獣医師。北海道でずっと働き、その傍、テレビの動物番組の監督をしたり、写真家、エッセイストとして活躍してきた。著書である「子ぎつねヘレンがのこしたもの」は「子ぎつねヘレン」として映画にもなっている。

 

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