すべて忘れてしまうから | ||||
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燃え殻の初めての小説「ボクたちはみんな大人になれなかった」を読んだ後、その書評の最初に「ううむ、不思議だなぁ。特にスタイルが新しいわけでもなく、内容が奇抜なわけでもない。それなのに強烈に心惹かれるのだ」と書いた。この「すべて忘れてしまうから」は「週刊SPA!」に連載されたものをまとめたエッセイ集なのだが、やはり同じようなテイストで同じような気持ちになった。
話は少しだけズレるが僕は自己啓発本の類を読まない。このエッセイを読む人もそういう本は決して手に取らないだろう、と思う。燃え殻という人、子供の頃はいじめにあい、お腹が弱く頻尿で、エクレアの詰め込みが天職だと言われ、美人からマルチ商法に誘われ、集中力が5分と続かず、イヤだと思いながらも満員電車に乗り続け、美術制作会社に勤めがながらこんなエッセイや小説を書いている。彼もまたそういう本とは無縁に違いない。
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