また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

■ま行の作家

【書評】宮部みゆき「荒神」-これは現代にもつながる人と「怪物」との物語だ

荒神 posted with ヨメレバ 宮部みゆき 朝日新聞出版 2014年08月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す これまで宮部みゆきの時代小説は宮部ワールドの中の時代物、という感じがしていた。しかし、この「荒神」の前半などは、正統的な時代小説の趣…

【書評】宮部みゆき「ソロモンの偽証 第2部/第3部」-学校内裁判という設定とそのすごさ!

ソロモンの偽証(〔3〕(第2部)) posted with ヨメレバ 宮部みゆき 新潮社 2014年09月29日 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す ソロモンの偽証(〔4〕(第2部)) posted with ヨメレバ 宮部みゆき 新潮社 2014年09月29日 楽天ブックスで探す A…

【書評】松家仁之「優雅なのかどうか、わからない」-後半になるにしたがって濃くなる陰影、生を思う深い余韻

優雅なのかどうか、わからない posted with ヨメレバ 松家仁之 マガジンハウス 2014年08月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 48歳の岡田匡は離婚し、15年余り住んでいた元代々木のマンションを出て、井の頭公園近くの一軒家で気ままな一人暮ら…

【書評】村上春樹「女のいない男たち」-誘発されるものが多く心を揺さぶられる短編集

女のいない男たち posted with ヨメレバ 村上 春樹 文藝春秋 2014年04月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 村上春樹はやはりおもしろい。7話が収録されたこの短編集、最初の物語など本当に普通に始まってフツーな感じで進んでいくのだけれど、…

【書評】宮部みゆき「ペテロの葬列」-さすが宮部みゆき。構成の巧さ!広がる闇の深さ!

ペテロの葬列 posted with ヨメレバ 宮部みゆき 集英社 2013年12月 楽天ブックスで探す Amazonで探す 「誰か」「名もなき毒」に続く杉村三郎を主人公にしたシリーズの第3弾。彼が日本でも名高い今多コンツェルンのムコ殿であることがこの物語の大きなポイン…

【書評】松家仁之「沈むフランシス」-それは大自然の中、儚く燃える淡い炎のような恋

沈むフランシス posted with ヨメレバ 松家仁之 新潮社 2013年09月30日 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す フランシスって何だ? まずは誰もがそう思うだろう。小説は川に流されてきた死体の描写から始まる。どうみても人間のようだが、これがフ…

【書評】宮部みゆき「泣き童子」-怪異や物の怪を描いても、そこには愚かさや弱さを含んだ人間たちがいる

泣き童子 三島屋変調百物語参之続 posted with ヨメレバ 宮部 みゆき 文藝春秋 2013年06月28日 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す やっぱり宮部みゆきは巧いなぁ。「三島屋変調百物語」の3巻目にあたるこの「泣き童子(わらし)」では、特に構…

【書評】村田沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」-リアルに浮かび上がってくる一人の女の子の姿

しろいろの街の、その骨の体温の posted with ヨメレバ 村田沙耶香 朝日新聞出版 2012年09月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 本年度の三島由紀夫賞受賞作品。2部構成だ。1部は主人公の結佳が4年生の頃の話。2部で彼女は中学2年生になっ…

【書評】村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」-巡礼の旅への強い共感がある

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 posted with ヨメレバ 村上 春樹 文藝春秋 2013年04月12日 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す フィンランドで主人公のつくるが「クロ」ことエリと再会する場面がとてもいい。高校時代に各々が分かちが…

【文学賞】読売文学賞小説賞に多和田葉子と松家仁之!

今年の読売文学賞小説賞に多和田葉子さんの「雲をつかむ話」と松家仁之さんの「火山のふもとで」が選ばれました。多和田さんは有名な方ですが僕読んだことないのです。でも、あらすじ等を読んでみると何だかとてもおもしろそう。松家さんの作品は去年のマイ…

【書評】村上龍「55歳からのハローライフ」-落胆!村上龍の熟年生き残り小説

55歳からのハローライフ posted with ヨメレバ 村上龍 幻冬舎 2012年12月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す まずは5つの中編からなるこの小説が新聞連載小説だったことに驚いた。こういうのもありなんだ。ううむ。しかし、これ、みんなが考え…

【書評】松家仁之「火山のふもとで」-人生の時間の豊かさ、美しさを強く強く感じる物語

Amazonで探す 楽天ブックスで探す これは今年のマイベストかもしれない。まずいいのが、静謐で豊かで美しい文章だ。それはまるで、この小説の主人公坂西徹が勤める建築事務所の「先生」村井俊輔が作る建物のようだ。彼の建築は、でしゃばらず、しかし、時代…

【書評】水村美苗「母の遺産 新聞小説」-これは大人の女を描いて見事な小説らしい小説!

母の遺産 posted with ヨメレバ 水村美苗 中央公論新社 2012年03月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 「ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?」という強烈なコピーが話題になった水村美苗のこの小説、冒頭はその母の死から始まる。あ…

【書評】宮部みゆき「ソロモンの偽証 第1部」-ラストの藤野涼子の決意、その潔さが読者にも勇気を与えてくれる

ソロモンの偽証(第1部) posted with ヨメレバ 宮部みゆき 新潮社 2012年08月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 事件は1990年冬、東京下町の中学校で起こった。中2の柏木卓也という男子生徒の死体が校庭で発見されたのだ。バブルの時代という…

【書評】三木卓「K」-おかしな夫婦の奇妙な生活の中に男と女や夫婦の永遠が見えてくる

K posted with ヨメレバ 三木卓 講談社 2012年05月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 小説家で詩人でもある三木卓が5年前に亡くなった妻との結婚生活を綴った私小説だ。Kとは妻の福井桂子のこと。彼女もまた詩人だった。最初に三木はKについ…

【書評】宮部みゆき「おまえさん」-シリーズ3作目、至福の読書とはまさにこのこと!

おまえさん(上) posted with ヨメレバ 宮部 みゆき 講談社 2011年09月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す おまえさん(下) posted with ヨメレバ 宮部 みゆき 講談社 2011年09月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 「ぼんくら」…

【映像化】宮部みゆきミステリー4週連読でドラマに

TBSが月曜夜9時の「月曜ゴールデン」枠で来週月曜から4週にわたって宮部みゆきのミステリーを放映する。7日は「理由」、14日「スナーク狩り」、21日「長い長い殺人」、28日「レベル7」となかなかのラインナップ。寺尾聡、伊藤淳史、田中麗奈、長塚京…

【書評】三浦しをん「舟を編む」-本屋大賞受賞作、辞書編集人というちょっと変わった人々

舟を編む posted with ヨメレバ 三浦しをん 光文社 2011年09月 売り上げランキング : 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す というわけで、今年の本屋大賞受賞作である。前項を読んでもらったらわかるが、受賞が決まった日には半分ぐらいまでしか読…

【BOOK NEWS】村上春樹「1Q84」、文庫化決定!

1Q84 1-3巻セット村上 春樹 というわけで、文庫化だそうです。3月末発売の4月新刊から3カ月連続で刊行。BOOK3まで一気に読めます。未読の人、図書館に予約してるけど、ち~っとも順番が回って来ない人はぜひ。単行本も買ったけど、文庫も欲しいって人もい…

【書評】宮部みゆき「チヨ子」-着ぐるみの中から彼女が見たのは?表題作が特にいい

チヨ子 posted with ヨメレバ 宮部みゆき 光文社 2011年07月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 宮部みゆきの小説は長編はもちろんだが、短篇でも「なんだ、つまらん」と思うような駄作がない。現代作家の中でも一番の「安心印」作家ではないか…

【書評】盛田隆二「身も心も」-リアルの中に見えてくる老いらくの恋の真実

身も心も posted with ヨメレバ 盛田隆二 光文社 2011年06月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 前回の「ダンスホール」に続く、光文社テーマ競作小説「死様」の中の一冊。嫁に勧められイヤイヤ通い始めた老人クラブの絵画同好会で礼二郎は幸子…

【書評】宮部みゆき「あやし」-人間の心の奥底にひそむもの、それこそが恐怖

あやし posted with ヨメレバ 宮部 みゆき/方緒 良 KADOKAWA 2003年04月25日 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す さて、久々に新刊以外の本を。文庫にもなっている宮部みゆき「あやし」だ。彼女の小説は大好きでほとんど読んでいる。写真を見ると…

【書評】盛田隆二「夜の果てまで」-恋と自分の人生に真摯に向き合う男と女の物語

夜の果てまで posted with ヨメレバ 盛田隆二 角川書店 2004年02月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 冒頭でいきなり「失踪宣告申立書」なるものが登場する。不在者は涌井裕里子、申立者はその夫だ。1991年3月に失踪した妻との婚姻を解消する…

【書評】盛田隆二「二人静」-様々なリアルな問題とせつないほどの恋模様、たて糸とよこ糸のバランスが絶妙

二人静 posted with ヨメレバ 盛田隆二 光文社 2010年09月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す Twitter文学賞国内部門で第1位だった盛田隆二の「二人静」を読んだ。これが私の初盛田。この人、「リアリズムの名手」と言われてるらしい。なるほど…

【書評】宮部みゆき「日暮らし」-人物の造形、構成の巧みさ、人間ドラマとしての奥深さ!

日暮らし(上) posted with ヨメレバ 宮部みゆき 講談社 2008年11月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す これは大好評だった「ぼんくら」の続編。単行本も上下2巻でかなり分厚いのだけど、文庫は上中下の3巻。ちょっとビビるがおもしろいから…

【書評】村上龍「半島を出よ」-舞台は2011年の日本!今読むとこの小説はさらにリアルに感じる

半島を出よ(上) posted with ヨメレバ 村上龍 幻冬舎 2007年08月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 半島を出よ(下) posted with ヨメレバ 村上龍 幻冬舎 2007年08月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す さて、なんだかまたあっ…

【書評】宮部みゆき責任編集「松本清張傑作短編コレクション〈上〉」-まさに「昭和」!古くさいと最初は思ったが…

松本清張傑作短篇コレクション(上) posted with ヨメレバ 松本清張/宮部みゆき 文藝春秋 2004年11月10日 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 「砂の器」「点と線」をはじめ松本清張の名作はいっぱいあるが、僕はまるっきり読んだことがない。こ…

【書評】宮部みゆき「あんじゅう」-暗獣=くろすけの存在のあわれさ、せつなさが心を打つ

あんじゅう posted with ヨメレバ 宮部みゆき 中央公論新社 2010年07月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 「おそろし」に続くシリーズ2作目。まずは3つの「うまい」。タイトルがうまい「あんじゅう」は「暗獣」である。中の話のタイトルは漢…

【書評】三崎亜記「となり町戦争」-見えざる戦争を描く筆致の見事さとテーマの奥深さに驚く

となり町戦争 posted with ヨメレバ 三崎亜記 集英社 2006年12月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 三崎亜記のデビュー作「となり町戦争」、タイトルだけだと、となりの町との奇妙な戦争をユーモラスに描いたドタバタ喜劇、というような感じが…

【書評】森絵都「永遠の出口」-構成から心理描写、背景描写まですべてにおいて長けた傑作青春小説

< 永遠の出口 posted with ヨメレバ 森絵都 集英社 2006年02月 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 「永遠の出口」、小学校三年から高校卒業まで逡巡しながら成長していく紀子という一人の少女を描いた連作小説だ。作者の森絵都はこの小説を2003…