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【書評】山田詠美「学問」-4人は自らの欲望に忠実に生きようとした!

 「欲望の作家」と言っても過言ではない山田詠美、これは去年の話題作だが、内容も知らずに読み始めたので、最初はかなり戸惑った。この小説、静岡のちょっと田舎が舞台。地元の子供たちは「熱あるんだら」とか「しちゃ駄目だに」とか遠州弁をしゃべる。どうもこういう田舎の子供を主人公にした小説が苦手なのでどうしたものかと思ったが、作家は山田詠美である。これがただの小説ではないことは「学問」というタイトルだけでもわかる。「学問」?この内容で「学問」?そんな興味から読み進めていくとそこにはやはり山田詠美の世界があった。

 

 リーダー的素養に恵まれた心太、東京からやって来た転校生の仁美、食べることに目がない無量、そして、寝ることが大好きな千穂。この4人がお互いを通して様々なことを学び成長していく。その過程がおもしろい。これは女性の側から書かれた非常に珍しいイタ・セクスアリスということも出来るが、主人公の4人は性欲はもちろん食欲や知識欲なども含めた「欲望の愛弟子」になろうとした少年少女なのだ。

 

 手探りながらも性を自分の元にたぐり寄せていく仁美と貧しい家に生まれながらも貪欲に知識を吸収していく心太のエピソードが強く心に残る。各章の最初に各人の死亡記事が載っている。それぞれの死を明らかにすることで彼らの生がくっきりと浮かび上がる構成が見事だ。

 

◎「学問」は2012年2月、新潮文庫で文庫化されました。

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