これこそ「愛について語るときに我々の語ること」の本来の姿。
レイモンド・カーヴァーの初期の作品について村上春樹は「翻訳夜話」などで、当時の編集者ゴードン・リッシュが強権をふるってカーヴァーの文章をズタズタにしたと語っている。この「ビキナーズ」は初期の名作短編といわれる「愛について語るときに我々の語ること」のカーヴァー・オリジナル版。
彼の短編ファンとしてはもちろんうれしいのだけど、ちょっぴり不安も。いわゆるミニマリズムといわれるシンプルでムダのない文体はリッシュの手で生まれた、ということも言えるからだ。何気ない日常を描きながらも、人生の深淵をかいま見せてくれるカーヴァーの短編、その素晴らしさは「ビキナーズ」でも感じることができるのか。いや、カーヴァーはカーヴァー、そんな心配はいらないと思うのだけど。
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