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【書評】向田邦子シナリオ集「あ・うん」-小説とシナリオを読み比べはまさにスリリングな体験、2つの向田邦子

 

 岩波現代文庫から出た「向田邦子シナリオ集」は6冊全部買った。彼女の作品はドラマも小説も好きだ。で、「あ・うん」。まずはシナリオを読む。そして、小説の「あ・うん」を再読。う~む、向田邦子…おそるべし! ってことはまぁ、わかってるのだが、いやいやいや、比べてみるとほんと恐ろしい。すごい人だなぁ、と改めて思った。

 

 まずはオリジナルの台本が書かれ、そのあとで小説化したらしいのだが、今よく見られるような安易なやり方とはまるで違う。どちらにも実にこまやかな工夫がある。シナリオは当然のことだが役者が演じることが前提だ。だからそれだけ読むとちょっとオーバーに感じる場面も多い。しかし、フランキー堺や杉浦直樹が演じるのなら、たぶんこれでいい。しっかりと計算されているのだ。一方、小説は読むだけのもの。セリフなどは一緒の部分も多いのだが、オリジナルのものを一から創りたい、という向田の気迫を感じる。地の文はけっしてセリフを補完したりはせず、ムダがない。切れ味がするどく、シナリオよりもグッとくる。

 

 親友の妻に惹かれながらも手さえ触れようとしない男、男の思いを知りながらもそれを口にすることのない友人、そして妻もまた…。きなくさいにおいがする太平洋戦争前の日本の男と女を描いた向田邦子の傑作。読み比べはスリリングでさえあった。

 

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