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【書評】金城一紀「映画篇」-5つの連作で紡ぐ映画への愛!とにかく泣ける、ラストワン。これこそ物語を読む幸せ

 

 いやぁ、これはまいったなぁ。まいった!まいった!まいったなぁ。こういう仕掛けになってるとはねぇ…。いくら書評ブログでもこいつはとても書けない。無粋な評論家なんかは、この仕掛けや「あの映画」のタイトルをばんばん書いちゃったのかもしれないけど、それをやったら読書の楽しみがな~んもなくなっちゃう。傑作だから黙って読みなさい、って言うだけでいいのかも。

 

 ここで書かれたのは4+1の短編。大団円の物語はいろんな意味で別格だけど、そこにいたる4つの話も文句なくいい。友情をテーマにした「太陽がいっぱい」、愛と復活と正義の物語「ドラゴン怒りの鉄拳」、哀しみの人生と希望の恋を描いた「恋のためらい/フランキーとジョニーもしくは トゥルー・ロマンス」、勇気と復讐の物語「ペイルライダー」。それぞれの物語はタイトルになった映画とも微妙にシンクロしながら、主人公たちのちょっと痛め?なハートをいつもの金城調ではなく、しっかりとていねいに描いている。これが、ホントにうまいのだ。うますぎるぐらいにうまいのだ。

 

 そしてラストワン。う~ん、これは泣ける。とにかく泣ける。全部読み終えて表紙を開けたところに描かれた「それ」を見たらまたまたジーンときた。そしてもちろん「あの映画」を絶対もう一度見たくなる!

 

◎「映画篇」は2010年6月、集英社文庫から文庫化されました。

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