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【書評】村上春樹「1Q84 BOOK3」-2つの月を見た彼らはいったいどこに向かうのか?

(ネタバレあり、これから読む人は注意!)

 BOOK2のラストで主人公の一人である青豆は死を覚悟した。物語はそこで終わり、いくつもの謎が残された。物語の終わりにすべての謎が解決される必要はもちろんない。謎は謎のままで残っていいし、僕らには想像力というものがある。いくらでも「考えは及ぶ」のだ。様々なことに。様々な疑問に。BOOK3では、確かにいくつかの謎は解き明かされたが、また新たな謎が生まれた。物語は続く、永遠のように。

 

 BOOK2の最後で死を覚悟した青豆がBOOK3の終盤では強く強く生きたい!と願う。その力強い言葉が僕らの心にストレートに届く。たとえその先に何があろうとも、青豆は生きて行こうと決心したのだ。この物語は究極のラブストーリーである。それと同時にただただ孤独に生きてきた青豆と天吾、2つの魂の救済の物語だともいえる。2つの月を見たのは彼ら2人ともう1人。彼らはある意味ずっと2つの月があるセカイで生きていたのではないか。リトル・ピープルも空気さなぎもマザとドウタも、ずっとずっと彼らに寄り添ってあったのではないか。

 

 BOOK2までは青豆と天吾の章が交互に書かれたのたが、3では探偵役である牛河の章が加わる。この物語において、彼が果たす役割はとても大きい。なぜなら彼こそが、2つの月を見た第3の人間だから。彼もまた孤独の魂を抱えた男だから。

 

BOOK1、2の書評はこちらの後半にあります

 

○村上春樹「1Q84」全巻は2012年3月から5月に新潮文庫で文庫化されました。

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