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【書評】村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』-言葉を使う仕事をする人、読書好きな人には特におすすめ

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 いやぁ~、おもしろかった、村上春樹と柴田元幸の『翻訳夜話』。もちろん皆さんご存知でしょうが、村上春樹はレイモンド・カーヴァーやジョン・アーヴィングなどの翻訳家としても有名。柴田さんは特にポール・オースターの翻訳家として高い評価を受けている人だ。そして、この本、翻訳の話ではあるのだが、そこにとどまらずに「言語」や「言葉」などさらに広がりのある話になっていて読み応えがある。

 

 例えば、村上さんのこんな言葉。「ビートとうねりがない文章って、人はなかなか読まないんですよ。いくら綺麗な言葉を綺麗に並べてみても、ビートとうねりがないと、文章がうまく呼吸しないから、かなり読みづらいです」。さらに、柴田さんのこんな言葉、「(翻訳の勉強として)日本語を磨きましょうという言い方をよく目にするんですけど、どうも何か違和感があるんですね、僕は。何でなのかなあ、所詮自分の使える日本語しか上手く文章にはのらないということを痛感するんです」。ふふふ、本当にそうですよね。それにしてもこの二人、翻訳が好きで好きでたまらないらしい。村上さんは小説で疲れた心をリハビリする、癒しの意味もあるようなのだが…。

 

 内容的には村上×柴田の対談、翻訳学校の生徒たちとのやり取り、若い翻訳者たちとのフォーラム(何と参加者に岸本佐知子がいる!)の3部構成、若者たちの質問に2人が非常にていねいに応えているのが印象的だ。間に2人が同じ短篇を訳すという趣向でカーヴァーの「収集」、オースターの「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」の各々の訳文が掲載されている。どう違うか?…う~む。この比較の話も結構深くていい。言葉を使う仕事をしている人、読書好きな人にもぜひ読んでもらいたい一冊だ。 

 

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