「江戸前の男」の主人公は落語家の春風亭柳朝。え~と、そう春風亭小朝の師匠である。かっこつけたがりだけど照れ屋で、野暮ったいことが大嫌い、思ったことをポンポン言うけれど結構小心者、粋を貫き通した江戸っ子落語家を作者吉川潮は本当にていねいに取材し、見事な一冊に仕上げている。惚れ抜いてるからこそ書けた本だと思うが、これ一冊で柳朝の人となりとその生涯がクッキリと浮かびあがってくるのだから書かれた本人も満足だろう。
序章に彼の死を持ってきた構成も見事。小朝が葬式に(立川)談志が来るかどうかやきもきするところ、談志があらわれ、「うん。来るべき時だから来た」と言い放ち「じゃあな」とかっこよく去っていくところ、小学校の同級生の会話から回想になるところなど、まさに落語のまくらの感覚で、本編にすーっと入っていく。
最終章は8年間の闘病生活のエピソード。病に倒れても、江戸っ子らしさ、落語家らしさを忘れない柳朝の姿をいとおしさを込めて描く作者のやさしさが何とも素敵だ。
2010.10.18 さてと、コピス騒動も一段落かな、吉祥寺。さすがにこのブログでも「ジュンク堂 吉祥寺」で検索して来てくれた人がかなりいました。吉祥寺の書店、大も小も古書店も共存共栄できればいいけれど。
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