川上弘美の小説にはいくつかスタイルがあるのだが、これは「センセイの鞄」に近いスタイル。個人的には非常に好きな世界だ。舞台は東京の西にあるとある町の古道具屋。「骨董じゃないよ。古道具なの。うちの店は」と店主の中野さんが言う通り、店内には雑多なものが所狭しと並べられている、そして、そこには、中野さん、店員のヒトミちゃんとタケオ、時々顔を出す中野さんの姉マサヨさんがいる。この小説で大切なのは「古道具屋」という空間、そこに流れる空気感だ。「センセイの鞄」のあの居酒屋のような。
その空間にいくらか個性的ではあるけれどそれなりにふつーの人々がいて、それぞれにそれぞれの恋模様がある。あまりに不器用なヒトミちゃんとタケオの恋。泥沼的な中野さんとその恋人サキ子さんの恋、しっとりと哀しいマサヨさんと丸山氏の大人の恋。
ヒトミちゃんとタケオとのうまくいかなさ、がなんともいい。50代半ばのマサヨさんの恋はさらによい。出て行った丸山氏に対して彼女が語る言葉が胸を突く。そして、2人の本当の別れ。これはちょっと泣ける。ラストもなんだかツーンと寂しくて、たまらない。
2010.10.22 読書の敵は集中力のなさである。今、集中力がない。イカンなぁ。つまらんなぁ。ま、原因はわかってるんですけどね。うむ。
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