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【書評】佐藤多佳子「第二音楽室」-4つの物語は重なり合いひとつになる。優しい気持ちになると共に元気が出てくる

 佐藤多佳子の「第二音楽室」、音楽をテーマにした4つの物語、どれも女の子が語り手だ。鼓笛隊の落ちこぼれピアニカ組に入ってしまった小学生6人組、音楽の実技テストでペアを組み歌う中学生の男女、卒業式の証書授与でリコーダーの生演奏をすることになった男女4人組、中学時代のいじめをひきずりながらも高校ではバンドでベースを弾く女の子。これは共に演奏したり、共に歌ったりすることで、何かを見つけ、さらに前へ進んで行こうとする若者たちの物語だ。

 

 佐藤多佳子はこういう小さなグループの話がすごくうまい。彼らの間を飛び交う言葉が活き活きと感じられる。音楽の身体性を意識したように、お互いが体をたたいたり、どつく遊びをしたりというシーンが何度か登場するのも効果的だ。しかも、彼女の小説は読んでいるうちに心にぴたっと寄り添って来る。そこにある様々な感情…迷ったり、たたずんだり、振り返ったり、少しだけ勇気を出したり、登場する彼女たちのそんな心の動きに共感すると共に、いつの間にか自らも「その時代」に戻っている。

 

 文体は軽やかだけど、そこからそっと降ろされた錨(いかりは心の奥底までしっかりと届いているようだ。う~ん、いいなぁ。なぜだか急に涙が出ちゃったりするんだよなぁ。読んでいくうちに心がほどけていくような感覚があるんだなぁ。

 

 4つの物語は重なり合い、ひとつになる。なんだかとても優しい気持ちになると共に、元気が出てくる。これは若者たちだけの物語ではない。青春の想いを忘れてしまっているおじさんやおばさんにも必要な物語だ。

 

○佐藤多佳子「第二音楽室」は2013年5月文春文庫で文庫化されました

 

○ 佐藤さんの他の本の書評はこちら

  

 2010.12.2 あれあれあれ、12月になっちゃった。「第二音楽室」とペアになる「聖夜」は10日発売。男の子が主人公の長編小説だって。こちらも楽しみ。今読んでるのは吉田修一「悪人」。

 

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