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【書評】朝井リョウ「チア男子!!」-チアを通して、彼らは次の高みをめざす

 「桐島、部活やめるってよ」の朝井リョウのデビュー2作目。最後まで読んでやはり彼は力のある作家だと確信した。はっきり言って、前半は感心しない。ムダな表現があまりに多すぎるのだ。ムダがすべてダメというわけではないが、青春スポーツ小説のそれはテンポを生み出さない。致命的な欠点だ。最初の柔道の部分も長過ぎる。全10章のうちの6章後半からようやく良いテンポが生まれ、そこからラストまでは気持ちよく読める。それだけに前半のムダが惜しい。

 

 そのタイトル通り、これは男子だけのチアリーディングチームの物語だ。柔道をあきらめチアを始める晴希、誘ったのは友人で柔道でもライバルだった一馬だ。最初は7人、最終的には16人の大学生たちで作るチーム、彼らはそれぞれに物語があり、チアを通して何とか次のステップに進みたいと考えている。そんな彼らだからこそ、チアリーディングが必要だった。「チアは本来、観ている人を応援し、希望を、勇気を与える唯一のスポーツ」なのだ。しかも、メンバー間に強い信頼がなければ強くはなれない。そういう特殊性が彼らの心の成長を助けるのだ。

 

 16人はチアを通して変わり、立ち直り、さらに高みをめざし進んで行こうとする。大団円に用意された競技会、2分30秒の演技、そこで作者は、演技と16人の想いをシンクロさせるという大技に出ている。それは着地までピタリと決まって本当に見事。特に演技の描写が素晴らしい。朝井リョウ、彼の来年の活躍に期待したい。

 

◎「チア男子!!」は2013年2月、集英社文庫で文庫化されました。

 2010.12.18 よっし、年賀状印刷したぞ。この年末はいろいろあって忙しい。なんでもサッササッサとやらなくちゃ。がんばろう。

 

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