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【書評】木皿泉「Q10シナリオBOOK」-大きなウソがあるからこそキチンと描ける青春の物語

 ドラマのシナリオ本はけっこう読んでいる。倉本聰と向田邦子のものが多い。この木皿泉もそうだが、彼らのシナリオは絵がついてももちろんなのだが、つかなくてもすごくおもしろい。というより、つかない方がさらにおもしろい、そんな感じがする。

 

 さて、昨秋のドラマではダントツにおもしろかった「Q10(キュート)」のシナリオ集だが、これはまさに青春のドラマだ。その真っただ中で逡巡する若者たちのドラマだ。テーマになるのは愛だったり勇気だったり信頼だったりするのだけど、それを真っ向から扱えばとたんにドラマはウソっぽくなる。そのことを木皿泉はよく知っている。だから彼ら(木皿泉は夫婦のペンネームです)は未来から来たロボットという異形のものをこの物語の中心に置いたのだ。

 

 大きなウソがあるからこそ青春の物語もキチンと描ける。ま、木皿泉の場合、それだけではなく、シニカルな笑いやおかしなキャラクターを置くなど、彼らなりの技がたくさんあるような気がするけれど。いずれにしても「ウソっぽさ」やそれをそのまま描くことの「恥ずかしさ」を知っている人が書いているからこそ木皿ドラマはおもしろいのだ。

 

 なんだかえらそうなことを書いちゃったが、とにかく「Q10」は最高。「戦争を知らない子供たち」や「風」「さらば恋人」など昭和の名曲が歌われ、「死ぬほど考えるの。それが後悔しない、たったひとつのやり方よ」などなど多くの名言が飛び交い、貧困やいじめ、おたく、引きこもり、病気など多岐の話題が取り上げられ、主人公たちはもちろんのことワキのキャラクターまで見事に描かれているこのドラマはあの「すいか」以上の傑作かもしれない。そして、ラスト!!Q10はいったいどうなるのか?このラストの見事なこと。青春を生きる皆さんはもちろん、昔青春だった人々にもぜひ読んで(&見て)もらいたいドラマだ。あ、DVDも出てんのね。「ぱふ!」(ぱふはQ10語で「うん!」)

 

 

◯この本は2019年2月、河出文庫で文庫化されました。 1と2、2分冊です。

2011.2.12 なんだかこの雪かみぞれか雨かようわからんものがシトシトと降ってるのもヤだなぁ。只今一人静かに「二人静」読書中。

 

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