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【書評】盛田隆二「二人静」-様々なリアルな問題とせつないほどの恋模様、たて糸とよこ糸のバランスが絶妙

 Twitter文学賞国内部門で第1位だった盛田隆二の「二人静」を読んだ。これが私の初盛田。この人、「リアリズムの名手」と言われてるらしい。なるほど、これは納得!この小説で盛田は、主人公周吾の父親の認知症、入院する介護施設の実態、もう一人の主人公であるあかりの元夫のDVとストーカー行為、さらには娘志歩の場面緘黙(かんもく)症という病気など、ある意味、現代を生きる人間ならいつ自分や家族の身に降りかかってもおかしくないような問題をまさにリアルに描いている。

 

 徹底した取材の成果だと思われるが、盛田はこんな盛りだくさんの問題を巧みにストーリーの中に組み込みながら、無理なく一編の小説に仕立てあげている。一方で周吾のあかりへの想いも描かれる。彼は父が入った介護施設で介護士のあかりと出会い、いつしか彼女に惹かれていくのだ。様々なリアルな問題とせつないほどの恋模様、このたて糸とよこ糸のバランスが絶妙だ。あかりの娘志歩と周吾が心を通わせていくプロセスもなかなかいい。

 

 少しだけ個人的な希望を言うなら、この恋の結末はもう少しだけ突っ込んだものにして欲しかった。だってぇ……。これ、草なぎくん主演でテレビドラマにするといいな。あかりはちょっと地味だけど紺野まひるなどどうだろう?いずれにしてもこの「二人静」、盛田リアリズムを堪能できる読み応えたっぷりの物語だ。

 

◎「二人静」は2012年11月、光文社文庫から文庫になりました。

2011.2.18 お、今日は満月。え~っと「二人静」終わったので、やっとミランダ・ジュライ「いちばんここに似合う人」に突入。うふふふふ。

 

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