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【コミック/感想】谷口ジロー「ふらり。」-あ~いいなぁ、谷口ジローの江戸。鯨や象、若き日の一茶との邂逅も楽しい

 帯のコピーに「谷口ジロー江戸を歩く」とあったので、これはてっきり江戸版「散歩もの」かと思った。「散歩もの」は久住昌之&谷口ジローという名コンビが生んだ街歩きコミックの傑作だ。その江戸版ならかなり楽しいのでは、と思ったのだ。

 

 ところが、ところが。この主人公、なんだか不思議なのだ。一歩、二歩、三歩と数えながら町と町の間を歩いている。いわゆる「歩測」というやつだ。もちろんそんなことをしながらも彼は「江戸の町」を楽しんでいる。物売りの声、四季折々の行事、行き交う人々の様子、自然の移ろい…、それはまさに江戸そのものである。谷口の描写はいつも同様にとてもこまやかだ。まず、ストーリー中心に読んで、次は絵を楽しみながらじっくりと読む。あ~いいなぁ、谷口ジローの江戸。鯨や象、若き日の一茶との邂逅も楽しい。

 

 男は時々、夢見心地となり、いつの間にかとんぼになって空を飛んだり、亀になって日本橋川を泳いだり、蟻になって地面を歩む。その自在な魂!すでに隠居の身であるこの男、「子午線一度がどれほどの距離なのか」「地球はどれほどの大きさなのか」を知りたいらしい。そして彼は、最終的に北の地へと赴くことになる。そう、この男、実は教科書にも登場する「あの人」なのだ。この物語は1巻完結だが、谷口ジローの江戸ものへの期待はさらにさらにふくらんだ。

 

○谷口ジロー他の本の感想などはこちら

               

2011.5.8 今日でゴールデンなウィークも終わりですね。やれやれ…。bk1の「今週のオススメ書評」に「卵をめぐる祖父の戦争」が選ばれました。そのページはこちら(今週木曜まで)。

 

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