明治28年29歳から、明治35年9月19日34歳と11カ月余りで亡くなるまで、正岡子規の最後の8年間を描いたノンフィクション。「短歌研究」に連載されたものだ。僕自身は子規について常識の範囲内のことしか知らないので、ここに書かれていることが新しいのかどうかはよくわからない。しかし、関川さんのこの本、すこぶるおもしろかったことだけは確かだ。
晩年の子規はただただ壮絶である。壮絶を超えて壮絶である。しかし、この男、壮絶なのに驚くほどの健啖家でウンウンうなりながらもグイグイ食べる。作者が計算したところ、1日3800キロカロリー!だそうだ。「寝返りさえ満足に打てぬ重病人としては破格」である。これって病気じゃないのか!(病気だけど)さらに、なんでも残しておきたいというその表現欲にも驚く。生来の人好きおしゃべり好きで命がけでしゃべってるのに驚く。さらにいえば、「ホトトギス」を牙城として写生文、日本の近代書き言葉を生み出そうとする改革欲にも驚く。「病牀六尺」という限られた空間の中でパワフルに命を燃焼させている子規の姿に圧倒される。今まで思ってた以上にスゴい人である。
愛憎相半ばする高浜虚子との関係、遠く離れても変わらぬ思いで結ばれていた夏目漱石との友情。伊藤左千夫、長塚節、河東碧梧桐など子規門の面々との交流もおもしろい。もちろん、妹律との話も。わずか35年の人生、しかし、子規の一生は濃密な一生である。
◎「子規、最後の八年」は2015年4月、講談社文庫で文庫化されました。
2011.6.22 暑いじゃないか、暑いじゃないか、しかもムシムシしてたまらんじゃないか。東京でも30度超ってまだ6月だぞ。梅雨のさなかだぞ。本当にやめてくださいね…。読書は小林信彦の「気になる日本語」。
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