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【コミック】いがらしみきお「I(アイ)」-驚くべき物語が幕を開けた

 いがらしみきおがただものではないことは「ぼのぼの」を読めばわかる。いや、あの「いぢめる?」というひと言だけで彼のスゴさはわかるはずだ。さてさて、そんないがらしの最新作である。

 

 本当にこれにはぶっ飛んだ。仙台に暮らす作者がこの物語の舞台に選んだのは宮城の田舎である。登場人物が「オレ友だちいねもの」「返事すろコノヤロ」という感じでしゃべり、その絵も洗練とはほど遠いドロドロとした絵である。個人的にはこういう話もこういう絵も苦手なので、ゲェ~などと思いながら読み進めていった。ところがところが、読んでいくうちにそんなことはすべて吹き飛んでしまう。絵のタッチなどどうでもよくなってしまうのだ。表面上の表現など突き抜けたところにこの物語はある。帯の裏で作者は「幼い頃からずっと考えてきた、生と死のこと。命の意味。その先にある"答え"を、今なら描ける気がする」とコメントしている。

 

 母の死と共に生まれ、幼い頃から貧困と共にあったイサオ。彼はいつの間にか不思議な能力を持つようになる。裕福な医者の家に生まれながら小学生の頃から「オレはなぜ生まれてきたのだろう」とこの世界に違和感を感じている雅彦。この2人が物語の主人公だ。「見だらそうなってすまう。人間は必ず見ですまうのさ」「神様いだど。誰も見でねえどごさいだど」、時々、イサオが放つ言葉が読む者の心をえぐる。この2人はいったどこに向かうのだろうか?この奥深く熱を帯びた物語は、今まさに始まったばかりだ。

 

2011.10.7 コンピュータはMacしか使った事がない。スティーブ・ジョブス、56歳。あまりに早い死。アップルが彼の遺志をしっかりと継いでくれますように!!

 

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