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【書評】朝井リョウ「星やどりの声」-生まれ変わる家族を描いて見事な物語

  デビュー3作目だが朝井リョウは初々しい。何と言えばいいのだろう、作者自身の向日性、スクっと立っている感じが作品自体にも感じられて何とも気持ちいいのだ。確かにまだ瑕疵もある。それでもこの人はさらに大きくなりそうで今後も目を離すことができない。

 

 さて、「星やどりの声」。これは今までの学園ものとは違って家族小説だ。「星やどり」という純喫茶をほとんど一人で切り盛りしている律子には、死んだ夫との間に6人の子供がいる。長女琴美は宝石店で働いている既婚の26歳。就活中の長男光彦は大学4年生。二女小春と三女るりは双子の高3姉妹。二男凌馬は高1で三男真歩は小6だ。

 

 この6人を各章に分け、それぞれを主人公にしたエピソードが語られてゆく。交友関係を中心にしたその話を通して各人のキャラクターがくっきりと浮かび上がってくる。しかし、二女小春が母のある光景を目撃したあたりから物語に影が射してくる。そして、長女琴美をメインにした最終章。明らかになる彼女の秘密と決意、死んだ父との最後のエピソード、ちょっと涙腺がゆるむ「家族の輪」の話。このラストは本当に素晴らしい。父と母の思い、子供たちそれぞれの思いが伝わってきて心を打たれる。これは生まれ変わる家族を描いて見事な物語である。

 

○この本は2014年6月、角川文庫で文庫化されました。

2011.12.10 岡崎京子の未完作品集「森」を読んでるのだけど、あぁ、この続きが読めないなんて!と激しくがっかりした。クラブW杯。柏、いいサッカーしたなぁ。

 

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