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【エッセイ/感想】大野更紗「困ってるひと」-現状維持を選ばない難病患者・大野更紗がスゴい

 まずはタイトルが素晴らしい。「難病もの」によくこんな素敵なタイトルをつけた。パチパチパチ!つい「難病もの」と書いたけど、これは「闘病記」ではない。「顛末記」だろうか。ビルマ難民問題に関心を持ち、大学院にまで進んだ「ビルマ女子」が、ある日突然、得体の知れない病気にかかり病院を転々し、やっと病名が分かる。ホッとしたのもつかの間、入院した病院で彼女を待っていたものは…。

 

 自己免疫系だというこの病気、本当に凄まじい。「全身が腫れ、どこもかしこも触れられただけで針に刺されたような激痛が走り、手足は腫瘍だらけ、脂肪織炎だらけ、すべての関節がブリキになったように強烈に痛み軋み動かない、目は乾き腫れ、口の中は炎症で真っ赤…」、しかし、大野更紗はこの本の中で泣き言などたれない。いや、いろいろ言ってはいるが、結果的にはたれてない。助けてくれ、何とかしてくれ、などとは言わず、ただただ「困ってる」自分について語っているのだ。しっかり「現実」と向き合っているウェット感のない文章がいい。

 

 しかも,大野嬢、普通こういう病の人なら「現状維持」だと思うのだが、彼女はとにかくどこかに突っ走ろうとしてる。そして、最後には自らを野に放とうとするのだ。病気はもちろんのこと、奇天烈な先生たちや複雑怪奇な社会福祉制度などとバトルを繰り返しながら、人生のスタート地点にたどりつくのだ。これはエクストリーム「困ってる」彼女から、なんだか物悲しい2012年の僕らへの強烈なるエールである。必読っ!

 

◎「困ってるひと」は2012年6月、ポプラ文庫で文庫化されました。

2012.2.2 ううむ、いかん。寒いし、な。え~っと読書は積ん読本から和田竜「のぼうの城」。あ、そうだ。試写会で「ドラゴン・タトゥーの女」を見るが、これはいい出来。オリジナルへのリスペクトも感じられる。

 

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