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【書評】朝井リョウ「もういちど生まれる」-子どもと大人の境界線にいる若者たちの揺れ動く心情を描いた連作短編集

 これはいいぞ、かなり好きだ。「桐島、部活やめるってよ」でデビューした朝井リョウの4作目。今回は5編を集めた連作短編集だ。各編の主人公になるのは、もうすぐ20歳を迎えようとしている若者たち。大学生や美大生、予備校生、そしてダンサーをめざすスクール生だ。実は彼らは同級生だったり、恋人だったり、バイト仲間だったり、姉妹だったりすることが読み進めていくうちにわかってくる。青春のただ中にいる彼や彼女は、自分自身に対しても、恋や将来に対しても大いにとまどいながら、それでも何とか前に進もうと日々を生きている。彼らの自信と不安、強さと弱さ、希望と絶望…朝井リョウは子どもと大人の境界線にいる若者たちの揺れ動く心情をしっかりと描き出している。

 

 5つの中で特にいいのが表題作「もういちど生まれる」、そして、最終話の「破りたかったもののすべて」だ。表題作はいつも光の真ん中にいるような姉を持つ双子の妹の話。最終話は大きな美術展で大賞を取った兄を持つダンサー志望の妹の話だ。自分よりも才能がある(かのように見える)姉や兄がいる彼らのせつなさに心が震える。突破口が見つからずあがき続ける主人公たちがとったとんでもない行動…。そこに見えるかすかな希望…。これは今を生きる若者を描いて見事な青春小説だ。

 

◎「もういちど生まれる」は2014年4月、幻冬舎文庫で文庫化されました。

◯朝井リョウのその他の作品の書評はこちら

 

             

 2012.3.1 いやぁ、昨日の雪はすごかった。一転して今日の東京はポカポカ陽気。春は近いのか遠いのか。読書は窪美澄「晴天の迷いクジラ」。

 

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