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【書評】三浦しをん「舟を編む」-本屋大賞受賞作、辞書編集人というちょっと変わった人々

 

 というわけで、今年の本屋大賞受賞作である。前項を読んでもらったらわかるが、受賞が決まった日には半分ぐらいまでしか読んでおらず、実は、ええっこれが!と思った。前半は僕にとってはかなり物足りない。本当におもしろくなったのは半分を過ぎた4章からだ。これは「大渡海」という国語辞典作りに励む出版社の辞書編集部を舞台にした物語だ。僕はこの小説、勝手に辞書作りのプロセスをディープに紹介していくものだとばかり思っていた。しかし、前半は主人公ともいえる馬締(まじめ)ほか辞書編集人というちょっと変わった人間たちの方にスポットが当てられている。しかも、恋愛話が2つもあるのだ。いや、もちろん、人も大事。でも、こうなるとちょっと首を傾げたくなる。

 

 さて、後半。実はこの「大渡海」、完成するまでに15年という年月がかかっている。4章は前章からポンと飛び「最後の2年」の話になる。ここからは辞書で使う紙の話があったり、校正刷りの話があったり、イラストの話、語釈の話、編集部に電話をかけて来る助詞の「へ」にこだわりを持つ「へのひと」の話などどんどんとおもしろくなってくる。そして、発売まで半年という時に起こった大きなアクシデント…。あぁ、この辺りはおもしろかったなぁ。

 

 そして、待望の春!「大渡海」は予定通り完成するのか?……本屋大賞、これを推した書店員の皆さんの気持ちはよ~くわかります。うん、よかったんじゃないかな。あ、大渡海というネーミングについてベテラン編集者の荒木が最初の方で語っています。「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」「(私たちは)海を渡るにふさわしい舟を編む」と。う~ん、いいですね。

 

◎「舟を編む」は2015年3月、光文社文庫で文庫化されました。

2012.4.16 さてさて桜も散りましたかね。今年は長い間楽しめてよかったぁ。読書は金原ひとみ「マザーズ」へ。

 

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