書店で見た時、意外と薄いので勝手に期待はずれかな、と思ったのだがとんでもなかった。これは岡崎京子という希代の漫画家の仕事を見事にまとめたファン必読の書だ。いや、ファンでなくても、たとえば映画「ヘルタースケルター」を観た女の子がこれを一読して彼女のコミックをもっともっと読みたくなる、という感じの本。岡崎京子入門としても最適な一冊だ。
スゴくてうれしいのが全体の半分を占める全単行本解説。この解説を読めば、編者である増渕氏が岡崎さんのコミックをどれだけ愛し、大切に思っているかがよく分かる。各々を評論する目も確かだ。全33作を1冊ずつ見開きで紹介しているのだが、初版だけでなく新装版や愛蔵版、海外版の表紙までキチンと収録されている。僕はある時期、岡崎京子のコミックをドドドドドっと読みまくり、すっかり彼女にイカレちゃったのだけど、まだ読んでないのがあったんだよなぁ。ううむ。
他にもエッセイや評論、対談など言葉関連、デビュー前の習作など見逃せないものばかりだ。カバー装画は岡崎さんが迷いながら自ら選んだ、とある。編者の前書きを読むと、彼女はまたこの世界に戻って来る、そんな気がする。願望ではなく、きっときっとそうなる。
◎岡崎京子のその他のコミックの感想はこちら
2012.9.28 なんだか肌寒い。特に朝晩は。大型台風も急カーブしてこちらに来そうだし。読書は上林暁「故郷の本箱」。
【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。