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【絵本/感想】ショーン・タン「鳥の王さま」-とても豊かで、細部にまで楽しさが宿るショーン・タンの絵

 「アライバル」が人気になったショーン・タン。彼の言葉を借りれば、「"作品の素"のサンプルを、かなり緻密なデッサンからほんのいたずら描きまで、過去12年ぶんの中から選んで集めたのが、この本」だそうだ。それがどんなものであろうとも、ショーン・タンの絵を見るのは楽しい。とても豊かで、じっくり見てもまったくあきることがない。走り描きのような絵にも細部に楽しさがある。僕はまったくの素人だが、プロの人が見てもいろいろと感じるところが多い絵ではないだろうか。

 

 さらにこの本、岸本佐知子訳で数カ所に散りばめられたショーン・タンの言葉が示唆に富んでいてとても素晴らしい。「はじめに」という冒頭の言葉、「自分の作品について語るとき"インスピレーション"という言葉を使うのには、いつもためらいがある。まるで空から一方的に降り注ぐお天気雨を、ただ五感を研ぎすませて受け止めるだけ、みたいな感じがするからだ」。そしてまた、こんな言葉。「スケッチのすばらしい点は、生物の胚のように未分化であいまいなところだ。ざっくりと粗いタッチで描いた走り描きは、自分でも予期しなかった物や仕草や表情をそこここにはらんでいて、そこからどれでも好きなものを取り出して発展させていくことができる」。いいですねぇ、いいです。

 

 「鳥の王さま」は絵を見るだけでもウキウキと楽しく、文章を読めばクリエイティブな人々にとっても多いに刺激になる、そんな本。まさにショーン・タンの才能を再確認できる一冊だ。

 

◯ショーン・タンの他の本の書評はこちら

 

2012.11.12 松家仁之の「火山のふもとで」いいなぁ。じっくりと読んでいます。まだあれとかあれとか読みたい本はいっぱい。

 

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