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【絵本/感想】ショーン・タン「エリック」-エリックがホームステイ先に残したものは…

エリック

ショーン・タン/岸本佐知子 河出書房新社 2012年10月
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 これは著者の「遠い町から来た話」に収録されていた「エリック」を独立させ単行本化したものだ。「遠い〜」は大人向けに作られた作品集だが、この小さくてかわいい装幀の本は子供でも楽しめるし、お母さんが一緒に読んであげるのもいい。ちょっとしたプレゼントにも最適だ。

 

 物語の主人公は、交換留学生としてホームスティにやった来たエリック。彼は「勉強するのも眠るのももっぱら台所の戸棚の中」。そして、どこに行っても彼が興味を持つのは「たいてい、地面に落ちている小ちゃなもののほう」。お母さんはそれを"お国柄"という言葉で片付けてしまうのだけど…。小さくて葉っぱのようなエリックの造形がいい。そんな彼はホームステイ先の家族にちゃんとしたあいさつをすることもなくいなくなってしまう。でも、彼は家族のために…。心がポッと暖かくなるエリックの置き土産が素晴らしい。

 

 エリックがなんということもない小さなものたちに注ぐまなざし、作者がエリックに注ぐやさしいまなざし。そんなまなざしの交差したところにこの物語はある。短いけれどショーン・タンらしさにあふれた魅力ある一冊だ。

 

◯ショーン・タンの他の本のレビューはこちら

 

2013.2.6 勘三郎についで團十郎まで亡くなって言葉もない。新しい歌舞伎座が春には開場するのに…。歌舞伎界の今後を思うとなんとも言えない気分に。読書は原田ひ香「母親ウエスタン」を読了したばかり。

 

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