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ルーヴル美術館がその魅力を世界に発信するために漫画家たちの作品を出版するという「ルーヴルBDプロジェクト」の中の一冊。それにしてもこれは素晴らしい。通常版とオールカラーの豪華版があるけれど、豪華版がおすすめ。大判だし、谷口ジローの絵の魅力がグイグイと伝わってくる。高いけど…。う〜む、高いけど絶対にこっちだっ!
物語の主人公は作者の化身ともいえる漫画家の男。国際マンガフェスティバルの帰りに美術館巡りのためにパリに立ち寄った彼は、着いた途端に体調を崩してしまう。なんとか持ち直して、翌日ルーヴルに出かけるのだが、またフラフラしてきて…。ここから夢のようなうつつのような不思議な物語が幕を開ける。その先導役になるのが美しい女性に変身したあの「サモトラケのニケ」。これだけでとても盛り上がる。
男はルーヴルを訪れるたびに時空間をさまようことになる。そこでは風景画家コローの素描画の森に迷い込んだり、コローを敬愛する明治の画家浅井忠に出会ったり。ゴッホ最期の地オーヴェルに出向けば、そこでもまたゴッホ自身が写生をしていたり。特に、ニケが語るナチス侵攻からルーヴルの絵画を守った男の話には強く心を揺さぶられる。
これはまさにルーヴルの歴史を知り、その魅力に迫り、同時にアートというものの素晴らしさを再確認できる物語だ。谷口の絵の巧さは言うまでもないが、コローの絵などを見事な筆致で再現してみせるそのテクニックには驚いた。必読!
通常版はこちら。
2016.5.2 5月になっちゃった。っていうか黄金週間ですが。まぁ、あまり関係なし。読書は吉田修一の「橋を渡る」。
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