文句なくおもしろく、しかも、不思議な(というかヘンな)爽快感がある傑作だ。芥川賞もらえて本当によかった!この小説、主人公は36歳の古倉恵子という女性だ。18年前に彼女はコンビニ店員として「生まれた」。それまではその言動から家族を心配させ「どうすれば『治る』のかしらね」と言われてきた古倉さんだが、大学1年の時にコンビニでアルバイトを始め、その時初めて「世界の部品になることができた」、と自ら実感したのだ。そのままアルバイトで18年、今も古倉さんは「朝になれば、また私は店員になり、世界の歯車になれる。そのことだけが、私を正常な人間にしている」と思っている。
コンビニでは彼女はマニュアル通りに何でもこなせるし、店全体をいつも見渡し、気を配ることができる。この世の中には「◯◯人間」と呼ばれるような人はたくさんいる。そういう人間に対して「フツーの人々」はどこか偏見を持って接している。この小説がおもしろいのは、古倉さんから見た「フツーの人々」のあやうさ、おかしさがしっかりと描かれていることだ。常識って何?フツーって何?この時代の人間って何だかおかしくない?
コンビニの新人として単なる変人に過ぎない白羽がやってきて、古倉さんはこの男をうまく「利用」するのだが…。ラスト、彼女が放つ「コンビニ人間宣言」とも言うべき言葉の輝き!その力強さ!いいじゃないか!コンビニ人間で。いいじゃないか!「私」のままで。
◯この本は2018年9月、文春文庫で文庫化されました。
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2016.8.15 女子卓球団体準決勝の敗けが…。ううううむ。台風接近のようである。読書は白石一文「記憶の渚にて」。おもしろいっ!!
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