さて、出る本。原田マハ「いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画」(6/16)が集英社新書から出ます。ジャクソン・ポロックの絵をテーマにした小説「アノニム」が出たばかりですが、原田さんのアート小説は元キュレーターだけあって読み応えたっぷり。そんな原田さんがこのタイトルで書いた新書となるとちょっと気になります。
さらに文庫化が2つ。1つは2015年の本屋大賞を受賞した上橋菜穂子の「鹿の王」(6/17)1巻と2巻が出ます。単行本は上下2巻だったので6月発売分は上巻分でしょう。いずれにしても、この小説はおもしろいですよ。前のブログに書いた感想を引用してみますね。
◇2人の男を通して描かれる、力強い生命の物語。
今年の本屋大賞受賞作。作者の志の高さを強く感じる物語だ。「鹿の王」は単なるファンタジーではなく、医療ミステリーであり、冒険小説であり、人間小説でもある。
舞台は大帝国・東乎瑠(ツオル)に征服されたアカファ領。そこには元々の住民、東乎瑠からの移住民、さらには「火馬の民」などの辺境の民がいる。それぞれの思惑が絡み合い、それはまるでこの世界の紛争地の縮図のようにも思える。そして、主人公の2人。1人は「欠け角のヴァン」。妻と子を亡くし、絶望から死に場所を求めていた戦士団「独角」の頭。もう1人は高度なオタワル医療を受け継ぐ医術師ホッサル。犬の群れの襲撃から起こった病でなぜか生き残ったヴァンがもう1人の生き残り幼子ユナと逃亡の旅に出る。ここから物語が動き出す。彼らを待っているのは…黒狼熱、犬の王、沼地の民…。そして、2人を追うサエという後追い狩人の娘の存在。
犬に噛まれたことでその身体に異変をきたしたヴァン、病の治療法をなんとか見つけ出そうとするホッサル。2人の存在とその在りようはこの物語の中でも際立っている。ウイルスの話が人間世界とシンクロし、さらに深遠な物語世界を造り出す。圧巻なのは下巻の半ば辺りから。病のこと、命のことを主人公たちが語る長い場面、そして、驚きの謎解きとヴァンの決断!
絶望の縁にいて、もう生きていたくないと思っていた男が最後にとったこの行動は、読むものの心を強く打つ。それはまさに、作者が放つ生命に対する力強いメッセージだ。「生命」そのものを描いて、これは忘れることができない物語になった。
あぁ、なんかこの感想を読んでいるうちにまた読み直したくなってきた。未読の人は文庫でぜひぜひ!
そして、文庫化もう1冊。角田光代「今日も一日きみを見てた」(6/17)出ます。あぁ、もう表紙でダメだぁぁ。角田さんのブログ「トトほほ日記」もよく見ていますが、このトトは西原理恵子さんのところからやってきた猫で、家族が1人でも欠けるとふて腐れちゃうのが何とも可愛いのです。あ〜買いそう。
◯角田光代さんのブログはこちら。
◯これまでの「出る本、出た本」はこちらでまとめて。
2017.6.12 内閣支持率、若者が高いらしい。なんだかぁ…。読書はカーソン・マッカラーズ「結婚式のメンバー」。
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