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【書評】原田マハ「常設展示室」-巧いなぁ!原田マハの作家としての成熟を感じさせる短編集

  まず最初に軽く裏切られる。タイトルから常設展示されている絵にまつわる短編集かと思ったのだがそんなことはなかった。ま、それはある意味どうでもいいこと。「常設展示室」は原田マハの作家としての成熟を感じさせる一冊だ。

 

 最初の「群青」という作品こそニューヨークのメトロポリタン美術館で働く日本人スタッフが主人公だが、あとは日本が舞台。父親を介護する姉と弟の物語「デルフトの眺望」、高齢者専用住宅に住む母と娘を描いた「マドンナ」、パスポート窓口で働く女性とそこに現れたちょっと気取った男のストーリー「薔薇色の人生」、IT長者の愛人になった女性が見る夢「豪奢」。そしてラストは、時代の寵児となった現代美術の女性教授とその過去を描く「道」。それぞれ絵のタイトルが物語の表題になっている。

 

  最終的には絵との出会いがあるわけだが、メインとなるのは主人公の親や兄弟姉妹、男女関係の話で、それらを丁寧に描きながら絵と絡めて物語をフィニッシュさせている。絵画の周辺を描くのではなく、人間をきちんと描き、絵に落とし込んでいく。心象風景に絵を重ねて描くその巧みさ!短編ならではの上手さを感じる。いいなぁ。

 

 「常設展示室」というタイトル、常設の絵も登場することは登場するのだが、常設という言葉の中に「普段の暮らし」「日常」が含まれていると考えるのはちょっとうがった見方だろうか。とにもかくにも、ちょっとうれしい読書だった。

DATA ◆原田マハ「常設展示室(新潮社)1400円(税別)

 

2019.2.8  明日、東京は雪の予報。雪かきがイヤ、って言ったら北国の人に笑われるだろうか。読書はピエール・ルメートル「傷だらけのカミーユ」。

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