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【書評】原田ひ香「DRY」- 境遇の似た2人の女の悲しみ。その悲しみはあまりに深く、あまりに切ない

 ちょうど真ん中あたりか、「そのこと」が分かった時に、思わず声が出た。これって原田ひ香の小説だよねぇ…。ううううううむ、驚いた。作者初のクライムノベルということは知っていたけれど、こういう話だったとは!桐野夏生かよ。さらにタイトル。序盤、主人公の藍は元夫から「お前、乾いた女なんだよなあ」と言われる。そうか、ここから来てるのか、とその時点では思ったのだが違っていた。タイトルはまさに「そのこと」から来ていたのだ。う〜む、なんだかすごい話を読み始めちゃったなぁ。

 

 主人公の藍は離婚したばかり。母が祖母を刺した事件をきっかけに十数年ぶりに実家に戻ってくる。2人は元々仲が悪く、母は男に走り、祖母はお金に汚い。藍も2人にはずっと冷たくされながら育って来た。彼女らに対する恩など少しもない。それでも彼女は生きていくために、保釈された母と退院した祖母が住む袋小路の家に戻ることを決めたのだ。

 

  隣家に住む美代子は藍の幼なじみ。母親は家を出、祖母と父を見送り、今は祖父の介護をしている。そんな2人の久しぶりの再会がとんでもない事態の引き金となる。「そのこと」も、その後の展開もここで明かすことはできない。そんなことしたら読書の楽しみなんてこれっぽっちもなくなってしまう。言いたいけどね、言えないの。

 

 グロテスクではあるのだけど、「DRY」というこの物語から最終的に浮かび上がってくるのは貧しく寂しい藍と美代子という境遇の似た2人の女の悲しみだ。その悲しみはあまりに深く、あまりに切ない。

DATA ◆原田ひ香「DRY」(光文社)1728円(税込)

 

◯マイ帯コピー〈僕が考えた帯のコピーです〉

離婚、介護、貧困…その果ての「乾き」!

こんな「乾いた」人間、

あなたは見たことがありますか。

 

◯まったく違うとんでもなさだけど、原田ひ香はこれもおすすめ!

 

 2019.2.28  というわけで、コピーライターでもありますし、自分なりに帯のコピーを考えてみることにしました。昔、「ルパン三世」や「鎌倉ものがたり」などコミック文庫の帯をずっとやってたんですよ。読書は絲山秋子「夢も見ずに眠った。」。

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