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【書評】朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」-生き難い時代をもがきながら生きていく魂を描いた傑作小説

 今年のマイベストに間違いなく入ってくるであろう傑作小説。一応、中央公論新社の文芸誌「小説BOC」の「対立」をテーマにした「螺旋プロジェクト」の中の1冊ではあるけれど、はっきり言ってそれはどうでもいい。これだけで独立しているし、朝井リョウの新たな一歩となるであろう力強い物語になっている。

 

 主人公は智也と雄介の2人。第1章で智也は植物状態でベットに横たわり、雄介は親友として毎日彼の元を訪れている。2人に何があったのか?2章以降は回想になるが、2人の関係が直接描かれるわけではない。転校生として2人の通う小学校にやってきた一洋、中学で同じクラスの亜矢奈、大学で出会った与志樹。それぞれの物語がしっかりと描かれる中で、登場人物的に2人が出てくる。競争的なものを排除する時代を生きてきた若者たちの「今」をリアルにそして細やかに描くことで、2人が生きてきた時代も見えてくるのだ。朝井リョウはデビュー作の「桐島、部活やめるってよ」「何者」「何様」など、群像劇の中でそのテーマを浮かびあがらせるのが上手い。

 

  智也と雄介は小学生の頃から「なんでこの2人は仲がいいんだろう?」と周囲に思われ続けてきた。対立してるように見えるのに、なぜ?この問いへの答えが、物語のテーマへとつながっていく。「生きがい」というものを対立や摩擦から求めようとする人間がいる。そうしなければ自己の存在を感じることができない人たち。しかし、その先に待っているものは?

 

 これはたぶん、僕のような年齢の人間よりも作者のように平成を生きてきた若者たちに共感を呼ぶ物語だろう。この時代に生き難さを感じてきた者たちにこそストレートに届く平成の物語だ。ラスト、暗闇の中で思考を続ける智也。そこに希望はあるのだろうか?

 

 DATA◆朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」(中央公論新社)1600円(税別)

 

◯勝手に帯コピー〈僕が考えた帯のコピーです〉

 

この時代、うまく生きられないと

感じてるあなたへ。

 

 2019.5.7  妻の体調が悪くてどこにも行かなかった10連休が終了。読書はヨシタケシンスケ「思わず考えちゃう」、なるほど!

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