コートールド美術館、日本ではそれほど有名ではないのだが、イギリスでの印象派・ポスト印象派の殿堂と言われている。コレクションの元になっているのは実業家サミュエル・コートールドの収集品。セザンヌなど評価が定まらないうちに目をつけて買い取っているので、この人の先見性と審美眼は大したものだと思う。
今回の美術展、それほど混んではいないが内容的にはなかなか充実している。構成に工夫が凝らされていること、重要作品は案内ボードを設けて丁寧な説明があることもうれしい。コートールドの部屋を壁紙で再現し、それぞれの絵がどのように飾られていたのかが分かるのもおもしろい工夫だ。
コートールドコレクションの核をなすのはセザンヌ、ルノワール、ゴーガン(という表示)だと言われているようだが、この美術展でも数はそれほどではないけれどそれぞれの名画がやって来ていてうれしい。特にセザンヌはいいなぁ。「カード遊びをする人々」「パイプをくわえた男」「キューピッドの石膏像のある静物」などなど。ルノワールの「桟敷席」もなかなかいい。
とはいえ、白眉はやはりメインビジュアルにもなっているマネの「フォリー=ベルジェールのバー」だろう。教科書絵にはあまり興味がないのだが、これはううむと唸った。主人公の女性の表情、ほとんどが鏡であるその背景、そこに映る不思議なものたち、いろいろなところに仕掛けがあって観ていてまったく飽きない。これとセザンヌを観るだけで行っても十分に元は取れる。12月半ばまで開催中なので時間がある人はぜひぜひ!
*アートも好きで時々美術展に足を運ぶので、これからはその感想も載せていければと思っています。よろしく!
DATA◆東京都美術館「コートールド美術館展」〜12月15日。 休室日-月曜日(11月4日は開室)と11月5日。
◯詳しくは公式ホームページを!
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