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【書評】せきしろ×又吉直樹「カキフライが無いなら来なかった」-自由律俳句、入門編としてピッタリの一冊!

せきしろ×又吉直樹「カキフライが無いなら来なかった」

 

  ツイッターのフォロワーの人が時々自分の自由律俳句をツイートしていて、おもしろいな、と思っていた。自由律というのはその名の通り五七五にこだわらず季語などもない俳句のことだ。ちょっと興味があったので手始めにこの文庫本を読んでみることにした。

 

 「カキフライが無いなら来なかった」は、せきしろと又吉直樹の自由律俳句の作品集だ。2人の500以上の句と時々挟まれるエッセイ、彼らが撮った写真などが掲載されている。せきしろさんについて僕はよく知らなかったのだが文筆業、コラムニストという紹介があった。又吉直樹にとってはこれが最初に出版された本らしい。

 

 自由律俳句といえば、まず思い浮かぶのが種田山頭火だ。「分け入っても分け入っても青い山」だとか「まっすぐな道でさみしい」などが記憶にある。あとは、尾崎放哉。「咳をしても一人」「爪を切ったゆびが十本ある」などいろいろとおもしろい句を作っている。で、せきしろと又吉直樹の句、こちらもなかなかおもしろい。僕が気に入ったものをいくつか紹介してみよう。

 ◇せきしろ句

 雨と冷蔵庫の音に挟まれ寝る

またカット世界チャンピオンの店だ

見よう見まねのコイントスをしたばかりに

知らない人だけど春菊買いすぎだろう

窓枠にビニール傘が蓄えのようにある

ラブホテルの前にサイドカー

 

 

 ◇又吉句

転んだ彼女を見て少し嫌いになる

登山服の老夫婦に席を譲っても良いか迷う

ホクロの位置は変わってなかった

独りだから静電気を無視する

自分のだけ倒れている駐輪場

ACミラン対ローソンみたいな草サッカー

 

やはり、詠む人の個性が出る。あとがきでせきしろがこんなことを書いている。

 

信じられるのは自分の中のふるいだけだった。この句は良いのか悪いのか、恥ずかしくはないのか、狙ってはいないか、単なるあるあるではないか、ただのネタではないか、そんなふるいにかける選別作業で、自分なりの自由律俳句を作りあげていくことを目指した。 

 

 なるほど。自由だからといって決して安易ではないのだ。当たり前か。創作っていうのはそういうものなのだろう。いずれにしても、自由律俳句、おもしろそうなのでちょっとやってみることにする。

DATA◆せきしろ×又吉直樹「カキフライが無いなら来なかった」(幻冬舎文庫)600円(税別)

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

 

 自由律俳句は日常を愉快にする?

まずは、ボソッと呟いてみる。

 

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2020.3.12  新型コロナ。後手後手の対策でここに来て動きが取れなくなりそう。読書は又吉直樹「人間」。

 

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