子供が寝ている部屋、猫がやって来て部屋にあるロボットのようなおもちゃをくわえて逃げ去ってしまう。そんな様子を描いた言葉のない4つのページから物語は始まる。そして、タイトル。ロボットが子供に語りかける。
やあ、おはよう。
とつぜんでもうしわけ ないんだけど、
ボク、もしものせかいに いくことになりました。
この導入部が巧い。
もしものせかい、の反対にあるのは、いつものせかい。「きみが どうしてもできなかったことや、ずっといっしょにいたかったひとや かわってほしくなかったもの。」、みんなみんな「もしものせかい」にいる。「どんなものでも どんなことでも どんなひとでも どんなきもちも きえて なくなったりしない。」「あるばしょが、いるばしょが かわるだけなんだ。」、こんな言葉がズンズンと心の中に入ってくる。
さらに物語は2つの世界のことを語っていく。「もしものせかい」が大きくなって「いつものせかい」が小さくなってしまうことだってあること。何もしなくても次第に「いつものせかい」は膨らんでいくこと。「もしものせかい」が大きな人は「いつものせかい」も大きく膨らませることができること。「もしものせかい」はきみのためのエネルギーのかたまりであること。2つの世界を大きく大きくしていくことが大事だということ。
付け加えることは何もない。伝わる人にはちゃんと伝わる、とてもとても大切な物語。「もしものせかい」でヨシタケシンスケはさらにその世界を広げた。必読!!
DATA◆ヨシタケシンスケ「もしものせかい」(赤ちゃんとママ社)900円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
もしものせかいといつものせかい、
どちらも大事、どちらも私。
◯ヨシタケシンスケさんの他の絵本の感想と情報はこちらから
2020.4.3 4月になった。コロナ禍はさらに加速。冗談のような布マスク2枚配布。読書は絲山秋子「御社のチャラ男」。
【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。