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【書評】恩田陸「祝祭と予感」-直木賞と本屋大賞をダブル受賞した「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ短編集、見事!!

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 直木賞と本屋大賞をダブル受賞した「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ短編小説集。昨秋、映画公開と同時に発売されたのだが積ん読になっていた。う〜ん、これはもっと早く読んでおくべきだったなぁ。全6編だが最初の「祝祭と掃苔」を読み始めるとすぐに「蜜蜂と遠雷」のキャラクターが自分の中で蘇り、動き出すのを感じた。それだけ「蜜蜂と遠雷」は素晴らしい小説で登場人物のキャラもしっかりと立っていたことが分かる。

 

 それにしても恩田陸は巧い。スピンオフにこういう物語を持ってくるとは!「祝祭と掃苔」はあのはざま亜矢とマサルが塵をも連れてピアノの恩師の墓参りをする話。さらに、あの芳ヶ江国際ピアノコンクールの審査員だったナサニエルと三枝子の出会いの話(「獅子と芍薬」)や課題曲「春と修羅」の作曲家・菱沼が曲を作るきっかけになった弟子の話(「袈裟と鞦韆」)、マサルのプレ・カレッジ時代のジャズとの出会いの話(「竪琴と葦笛」)など短いながらも忘れられない物語が続く。

 

   僕が特に好きだったのは「鈴蘭と階段」という話。ヴィオラに転向してから1年半。未だ自分の伴侶となる楽器を決めかねている奏(かなで)。「蜜蜂と遠雷」にも亜矢の友人として登場したが、そんな彼女がパリにいる亜矢から電話をもらって…。これは本当にいいです。楽器との邂逅を描いたストーリー!ラストは誰もが知りたい巨匠ホフマンと塵との出会いの物語。そう!こう書いていくと分かるのだが、この短編集は様々な出会いの話、すべての発端となる話なのだ。終わってみればシンフォニーのように互いが鳴り響き、「蜜蜂と遠雷」とも響き合う見事なストーリーズ!素晴らしい!!

 DATA◆恩田陸「祝祭と予感」(幻冬社)1200円(税別)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

「蜜蜂と遠雷」に連なる6つのスピンオフ短編集

タクトが振り下ろされた。

彼らがまた響き始めた。

 

 ◯「蜜蜂と遠雷」の僕の書評こちらから

  2020.5.19  アベノマスクがついに届く。犬もいらないというので寄付することに。読書は村上春樹×川上未映子「みみずくは黄昏に飛びたつ」。

 

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