「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」が大ヒットしたブレイディみかこさんの新エッセイ。英国の子供たち、というか息子とその友だち界隈の話はすこぶるおもしろかったけれど、英国のおっさんたちの話もやたらとおもしろい。
彼らは50代60代の労働者階級のおっさんだが、大きな背景として英国のEU離脱(ブレグジット)とずっと続いている緊縮財政がある。あくまで一般論だけど彼らはEU嫌いの右っぽい愛国者と見なされているらしい。そんなおっさん時々おばはんたちの類い稀なきおもしろ話!!
セクシー美容師と再婚して有頂天だったが離脱に賛成したばっかりにEU圏からの移民が客だという妻から罵倒されちゃうレイ。生きがいだった図書館での読書が図書館閉鎖で不可能になり、無駄な抵抗を始めるスティーヴ、EU離脱がらみでいつの間にか英国人の敵になり、さらに助けたホームレスに酷い目にあっちゃうアイルランド人のショーンなどなど、登場するおっさんたちの話はなんとも愛おしく人間っぽい。しかも、彼らにはちゃんとした主張があり、国や地域としっかりと結びついてる感じがする。これは前作の若者たちにも通じることだが、同じ視点から日本のことを思うと、日本人ってなんだか空っぽで大丈夫かニッポン?と思ってしまう。
前作を含めた彼女のエッセイのおもしろさは「対象の人々」にあるのは間違いのないところだが、それ以上にブレイディみかこというライターの観察眼と文章力がすごい。とにかく人間が生き生きと描かれているのだ。今ならば彼女の書くコロナ禍の英国の人々の話も読みたいが海外から見たコロナに揺れる日本のレポートも読みたい。とにもかくにもブレイディみかこはおもしろい!!
DATA◆ブレイディみかこ「ワイルドサイドをほっつき歩け」(筑摩書房)1350円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
子供達からおっさんへ、
ブレイディみかこは
交わり、見つめ、描き尽くす。
◯「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の僕の書評はこちら
2020.7.17 「GoTo」は東京抜きで。っていうか延期が正解なんじゃないの?読書は上橋菜穂子「鹿の王 水底の橋」が終わったところ。
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