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【ノンフィクション/書評】森まゆみ「明治東京畸人傳」-有名人から無名の人まで。その昔、谷中辺りには多くの畸人たちがいた!

 

 森まゆみといえばまず編集人であった地域誌『谷中・根津・千駄木』(通称「谷根千」)が思い浮かぶが、東京とそこで暮らす人々を描いたノンフィクションの傑作も多い。この「明治東京畸人傳」もすこぶるおもしろかった。

 

 明治から大正、昭和の初期にかけての谷中〜千駄木辺りの人物スケッチ(全25話)なのだが、何よりも驚いたのは、当時の谷中辺りがすごく元気のいい町で、おもしろい人がうじゃうじゃいた、ということだ。周辺には東大をはじめ学校が幾つもあり、下宿屋も多く、多彩な人物が集まったということもあるのだろうがちょっとすごい。登場人物にはサトウハチロー、幸田露伴、北原白秋、川端康成、三遊亭園朝など、 著名な人も多いのだが、昭和恐慌の発端となった渡辺銀行のオーナ ー「ヂエモン」や静座健康法の生みの親である岡田虎二郎、20世紀初頭にチベットまで出かけ仏典の原典を研究した「エカイさん」などの話がすこぶるおもしろい。

 

  「興味はすべて本ではなく、道に拾ったもの」と言い切る森まゆみは、まさに足で書く人で活気あふれる町の様子がしっかりと伝わってくるのも素敵だ。騎人とは、変わり者のことではなく「尋常ではない、素敵でおもしろい生き方をした人」、とのこと。こういう人がいたのだ、と知るだけでも楽しいし、谷根千辺りを再認識するのにも、もってこいの本だ。おすすめ! 

DATA◆森まゆみ「明治東京畸人傳」(中公文庫) 900円(税込) 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

畸人とは、尋常ではない、

素敵でおもしろい生き方をした人

 

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 2020.7.19  「GoTo」はなんだかまだいろいろとありそうだなぁ。やれやれ。読書は宇佐美まこと「ボニン浄土」。

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