BL出版「世界のむかしばなし絵本シリーズ」の1冊。これは「イタリアのむかしばなし」として紹介された童話だ。再話したイタロ・カルヴィーノさんは亡くなっているが現代イタリアを代表する作家。酒井さんは絵だけだが、表紙で分かるようにこの絵本はまさに酒井駒子ワールド!下地を黒く塗ってアクリルガッシュを使い、輪郭はチャコールペンシルのようなものを使う彼女の技法、それがなんとも味わい深い趣のある絵を生み出す。この技法は人を描く時に特に生きる。この童話でも主人公の造形がなんとも魅力的だ。
あとがきによると「梨の子ペリーナ」はカルヴィーノの「イタリア民話集」に収録された「梨といっしょに売られた女の子」という話が元になっている。イタリア北部モンフェッラート地方の話で、ここは洋梨など果樹栽培が盛んという。地方の名産品が昔話になってるのがなんだかいい。
物語は王様に「魔女の宝物」探しを命じられたペリーナがなんとか宝物を手に入れるまでを描いたもの。いろいろなものに行く手を阻まれながら話は進んで行くのだが、そこに登場する「かまど女」や「三匹の猛犬」「血のような川」が酒井駒子タッチながらも迫力があって印象に残る。途中、ペリーナが梨の木の上で眠る見開きのページが特に美しい。最後はもちろんめでたしめでたしになるのだが、親子で楽しむにはピッタリの1冊だ。
DATA◆イタロ・カルヴィーノ:再話 酒井駒子:絵「梨の子ペリーナ」(BL出版)1600円(税別)
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