いやいやいや、驚いた。ショーン・タンはこのブログでもいろいろ紹介しているので知ってる人も多いと思うが、言葉のない絵本「アライバル」を皮切りに続々と傑作を生み出しているオーストラリアの絵本作家だ。で、この「内なる町から来た話」という本、分類的には絵本なのかもしれないが、その範疇には全然収まっていない。以前に出た「遠い町から来た話」の姉妹編ということだけど、とんでもなくそれ以上だ。
まずは絵だ。実はこの絵の一部を昨年、ちひろ美術館で開催された「ショーン・タンの世界展」で見ているのだが、収録されている絵の原画は100×150cmという大きなサイズで絵本の絵というよりも僕はアートだと思った。現代アートと呼んでもまったく違和感はない。描かれているのは動物たち。背景は都市の街並みが多い。自然の中のカタチと人工物、その組み合わせが見ているものを刺激する。
各々の絵には文章が付いている。8行ぐらいのものもあるが、長いものは11ページにも及ぶ。短編といってもいい長さだ。しかもその文章がフツーじゃない。岸本佐知子の翻訳もいいのだろうが、これはもう文学!そしてこの1冊はアート×文学の1冊なのだ。犬と人との物語がなんともいいが、クマが弁護士を立てて人類に訴訟を起こしたり、会社の幹部が会議室でカエルになったり、巨大なカタツムリのカップルが街で愛を交歓したり。五感を激しく刺激するショーン・タンワールド、これは必見必読だ。
DATA◆ショーン・タン「内なる町から来た話」(河出書房新社)3190円(税込)
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