「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」「ワイルドサイドをほっつき歩け:ハマータウンのおっさんたち」に続くブレイディみかこの最新エッセイ。ただ前の2冊が人間中心だったのに対して、これは「英国」が主人公。まぁ、前の2冊だってその背景として英国の今がしっかりと描かれていたわけだけど。
今の英国を語るのには「EU離脱(ブレグジット)」と「緊縮財政」は欠かせない。というか、この本を読んでいるとすべてはそこにつながっている感じさえする。あとは、移民の多さもその要因になっている「多様性」、「格差と分断」「貧困」そして「労働者階級」もよく出てくるワードだ。
タイトルになっている「ブロークン・ブリテン」という言葉は英国の社会的荒廃を表す言葉のようだが、この本の中でブレイディみかこは
壊れているのは特定の人々だけではない。我々はみんな壊れている。
と書いている。そしてこのエッセイを読むといろいろな側面からそれを実感することができるのだ。最初の一文が「生理貧困」の話でちょっと腰が引けちゃうが、なぜか右翼コメディが復活してきてるUKコメディ、パブよりフードホール(フードコート)に人が集まりだしたW杯観戦、ディヴィッド・グレーバーという人類学者による反緊縮論、さらに映画、音楽、教育などなどの今が描かれていてなんともリアルでおもしろい。で、これらすべてが「ブレグジット」や「緊縮財政」、それによって起こった対立へとつながっていく。
前の2冊を読んだ時に、とはいえ英国人ってよく考え、人権にも理解がある日本人よりずっとまともな人々って感じがしたのだけど、どんどん壊れちゃったのしらん?コロナの現在も語られているがパニック買いに走り出した英国人を見て著者は
この国とコロナ離婚することになったらどうしようと本気で心配になってきた。
とまで書いている。さてさて、一体どこにいくのだろう、ユナイテッド・キングダム!ブレディさんにはその行方をずっとずっと追ってもらいたい。
DATA◆ブレイディみかこ「ブロークン・ブリテンに聞け」(講談社)1350円(税別)
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