また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【絵本/感想】カトリーヌ・シュリュグ:文 レミ・サイヤール:絵「ママはかいぞく」-隠されたもう1つの話について書こうと思う


 年末に発表された「MOE絵本屋さん大賞2020」で6位になった絵本。カトリーヌ・シュリュグが文章を書き、レミ・サイヤールが絵を担当している。絵本の紹介に「もう1つのお話が隠された仕掛け絵本」とあってちょっと気になったので読んでみた。

 

 小説でも絵本でも書評などで読書の喜びを失うようなことは書かないように気をつけている。でも、これはあえて「もう1つのお話」について書きたい。そうしなければこの本の大切さが伝わらないからだ。表向きはタイトル通り、海賊になったママの話だ。毎週毎週「かになんてへっちゃらごう」に乗って海に出て行くママ。胸に傷のある新米の海賊ママは船酔いで顔が真っ青、吐き気で食欲もなく、寝込んでしまう。そんなママも次第次第に元気になって、バンダナ巻いて敵と戦っている。めざすは宝の島!

 

 

 鋭い人は気づくかもしれないが、これは乳がん闘病をテーマにした絵本だ。西洋では「かに」にはがんの意味もあるそうだ。胸の傷、吐き気、バンダナなどなどの言葉、そして絵にも少しずつヒントが隠されている。シュリュグの解説によると2016年に乳がんを患った彼女は、息子にがんについて話すヒントになる絵本を探したけれどどれも暗いお話や動物に転化した話でガッカリしたという。そんなある日、「海賊」というアイデアが浮かんだらしい。

 

 感想を読むと「私も海賊だった」というコメントもあった。そうだ、これは「すべての海賊とその家族」、そして「海賊だった」あなたと「海賊になるかもしれない」あなたへの物語。ぜひ手にとって読んでみて欲しい。
◆DATA カトリーヌ・シュリュグ:文 レミ・サイヤール:絵「ママはかいぞく」(光文社)1500円(税別) 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

「すべての海賊とその家族」、

そして「海賊だった」あなたと

「海賊になるかもしれない」あなたへの物語。

 

 2021.2.5  緊急事態宣言10都府県での延長が決まったが、さらなる対策なしで感染者は減るのだろうか?読書は阿部暁子「パラ・スター〈Side百花〉」。

 

【書評ランキングに参加中】

ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ