ノベライズ版もあるのだけど、どうもそれは苦手なのでオリジナルシナリオを読む。シナリオは基本、ト書きとセリフなので頭の中でいろいろと想像しながら読むことができて楽しい。問題があるとすれば、映画の主人公の絹は有村架純で麦は菅田将暉だってことが分かっちゃってる。分かってる以上、そのイメージで読んでしまう。それはもう仕方がない。というわけで、映画はまだ見ていない。
一緒に暮らすようになり、大学を出てもお互いフリーターの2人だったが絹の就職が決まり、麦もやっとのことでネット通販専門の物流関係の会社に就職を決める。
さて、「花束みたいな恋をした」。これは絹と麦の2015年から5年間の物語だ。坂元裕二としては珍しく(たぶん)固有名詞がたくさん出てくる。天竺鼠だとか押井守だとか穂村弘、今村夏子、きのこ帝国、早稲田松竹、ゼルダだとかゴールデンカムイだとか。2人はそんな諸々で趣味が合い、会ってから急速に親しくなっていく。これは仲良くなった2人がいろいろとあって最終的に別れてしまう話なのだけど、ラブラブになっていく前半よりもダメダメになっていく後半の方が「ほん」として読むぶんにはおもしろい。なんてこと言っていいのか?
一緒に暮らすようになり、大学を出てもお互いフリーターの2人だったが絹の就職が決まり、麦もやっとのことでネット通販専門の物流関係の会社に就職を決める。
「僕の人生の目標は絹ちゃんとの現状維持」
という麦だが、会社は思った以上に忙しく、観に行くと約束していた舞台のことでもなんだかおかしなことになってしまう。こんな会話。
麦「だから行くって言ったじゃん」絹「じゃあって。じゃあだったら行きたくないよ」麦「え?」絹「じゃあの数が多いんだよ、最近」
このリアル!忙しさにかまけていろんな「好き」を手放してしまう麦。一緒に入った本屋で「人生の勝算」を立ち読みしている麦。どんどんと気持ちがズレて離れていってしまう2人。
いうまでもないことだけど坂元裕二はセリフが巧いしおもしろい。今回、モノローグが多いのだけどそれが上手く機能している。そして、ラスト近くのファミレスのシーン。ううううむ、これはもうどうしようもなく切ない。そして、ラストの粋!絹「好きで一緒にいるのに、何でお金ばっかりになるんだろうって」
麦「ずっと一緒にいたいからじゃん。そのためにやりたくないことも…」
絹「わたしはやりたくないことしたくない。ちゃんと楽しく生きたいよ」
◆DATA】坂元裕二「花束みたいな恋をした」(リトルモア)1600円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
僕らは出会い、そして、別れた。
あの時の気持ちは
一体どこにいったんだろう?
◯ノベライズ版はこちら!