このブログでも何回か紹介した韓国の絵本作家ペク・ヒナ。デビューしたのは2004年で、日本では2017年に出た「天女銭湯」がデビュー作だ。その後、「天女かあさん」「あめだま」「ぼくは犬や」などブロンズ新社から出た絵本で注目を集めている。この「お月さんのシャーベット」は2010年の作品でこれまで日本で発売された絵本よりちょっと古い。
登場キャラが粘土で作られていた最近の作品とは違い、この作品は紙で作られている。造形としてはデフォルメの効いた粘土の方が迫力があっていいのだが、この作品でも背景との組み合わせなどペク・ヒナらしさが横溢していて、さすが!と思わせる。韓国では13万部という大ヒット。中国や台湾でも出版されている。
それは それは ねぐるしい
なつの ばんやった。
あつくて あつくて ねるどころか
どうしようも あらへん
ある寝苦しい夏の夜の話。長谷川義史さんのいつもの大阪弁訳がいい。あまりに暑くてお月さんが、ぽた…ぽた…ぽた…と溶けている。班長のおばあちゃんが大きなたらいを抱え飛び出して来て、お月さんのしずくを受け止める、最初のそんなシーンがいい。そして、その月のしずくがシャーベットになるのだ。
お月さんの シャーベットは
それは それは つめとうて あまかった。
それから、それから、月のうさぎさんがやって来たり、月見草が咲いたり。そして、そして、真っ暗な夜空に…。ペク・ヒナの才能が光るファンタスティックでハートウォーミングな物語。
「ほな、おやすみ」
◆DATA ペク・ヒナ「お月さんのシャーベット」(ブロンズ新社)1400円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
そのシャーベットはお月さんが
溶けたしずくからできたんや。
◯ペク・ヒナさんの他の絵本の感想はこちら
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