金原ひとみの「アンソーシャルディスタンス 」を読みながら、今日マチ子の「Distance わたしの#stayhome日記」を1ページずつゆっくりとめくりながら読み進めていた。金原さんの小説はキシキシしていて、なんだか息苦しくなったりもしたが、今日さんのイラスト(彼女はあとがきのようなもので「まんが」と表現していた)と短い文章でできたこの一冊はフツーの感覚でフツーに読むことができた。とはいえこれもまた「コロナの時代のリアル」!
今日さんの絵はそのタッチとテイストが好きで以前からよく手に取っていたが、これは2020年4月から2021年4月まで彼女がツイッターなどに投稿した作品を再編集したものだ。最初のページは2020年4月13日。「東京」というタイトル、「雨が降っていて、誰も外にいない。」の一文、モータープールのある寂しげな雨の住宅街。最後のページは2021年4月7日。「これから取り壊す家」というタイトル。「家を取り壊しているのを見るのが好きだ。(後略)」、2階にベランダのある古い民家の前に業者のトラックが止まっている。
最初彼女は一連のツイートを「コロナ禍の風刺絵にしよう」と考えたそうだ。しかし、路線を変更し「1コマで叙情を含む漫画として成立させたい」と考え、試行錯誤したらしい。この「叙情を含む」というのがいいなぁ。それをなくしたら人間はいなくなる。コロナ禍が終わってまた僕らがこの1冊を手に取ったとき、その叙情が僕らを時代につなぎ止める。
普段と変わらないように見える切り取られた日常、しかし、多くの人々がマスクをしている。時々登場する天使はなんの象徴なのかよくわからないけれど、その姿になぜかホッとし、なぜか救われる。このコロナ禍はいつ終わるのだろう。終わったらぜひまた手に取り読んでみたい1冊。その時僕は、いったい何を感じるのだろうか。
◆DATA 今日マチ子「Distance わたしの#stayhome日記」(rn press)1500円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
このdistanceを僕らはいつまで
覚えているのだろう?いつまで?
◯こちらも併せて読んでみたらおもしろいかも
2021.8.11 そろそろお盆休み?どれぐらいの移動があるのか、不安。読書は石田ゆり子「ハニオ日記 2018-2019」が終わって「ハニオ日記 2019-2021」へ。
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